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いま動画配信を考えている音楽家へ──無料配信の意味と、その方法について

新型コロナウィルスの影響下にある今、世界中の多くの音楽家・団体が、自分たちの音楽をネット上に配信しています。

そこで、「動画配信で収益は望めるのか」「無料配信の是非は」そして、「いま、ひとりの音楽家として、何を考え、どうやって配信をすればよいのか?」──という疑問について考えました。日本語圏ではオーケストラや海外団体の配信が取り沙汰されやすいので、あえて日本国内、個人(フリーランス)の、動画配信を試みる音楽家界隈に絞ります。

具体的な動画配信の方法やアドバイスだけ見たい人は、目次を開いて「無料の演奏動画配信において考えてみたいこと」という項目へジャンプ。

序: 音楽家が動画配信で収益を得ることは可能か?

まず、「動画配信でお金稼げるの?」という話を。結論から言うと、今すぐには難しい。様々な動画配信のアプリ、サービスが存在しますが、いずれも即収益化するにはハードルが高いと思います。

  • YouTube──広告収入 or 生配信にてチャット式投げ銭。が、収益化するためには1,000人のチャンネル登録者過去一年以内に4,000時間以上の再生時間が必要。後者は意外と動画をあげてさえいればクリアできる(らしい)が、前者が絶望的。
  • 17 live(イチナナ)──生配信にてチャット式投げ銭。が、いかんせん音楽というより、キラキラ☆ぴちぴちカワイイ☆ライバーが多すぎるように見え、手を出せずにいます。アジア圏外ではそもそもアプリがダウンロードできないっぽい。できました。公式サイトから直接飛んでダウンロードリンクに飛ぶのがいいみたいです。
  • SHOWROOM──生配信にてチャット式投げ銭。が、以下略

他にもまだあるけれど、そもそも、機材設定やトーク・チャットへの応酬など、生配信という行為にはかなりのスキルを求められます。いろんな人の生配信を視聴してみると、その難しさがわかると思います。

また、録音や映像をコンテンツとしてアップロードし、購入してもらうという手段もあります。こちらのほうが多少、現実的かもしれません。

  • Bandcamp──先日、新型コロナを受けて「販売手数料ゼロ」期間をもうけた(現在も限定的に開催。公式サイトをご参考ください)音楽プラットフォーム。日本語圏以外の人口が非常に多く、手数料やアップロード方法も比較的とっつきやすい。
  • PayPay──QRコードを作成し、そのQRを経由してPayPayキャッシュの受け渡しが可能。作成者がPayPayユーザーでないと無意味な点がネック。【追記】SNSやWEB上でのQRコード公開によるPaypayキャッシュの受け渡しは規約違反にあたるとのことです。
  • Note──文章だけでなく、映像・録音ファイルなども販売できる。本人確認書類など一切なしで有料販売できる。それはそれでどうなんだ。
  • BASEやSTORESなど──簡単に自分だけのオンラインストアが作成できる。ブランディングも兼ねるならベストかもしれない。

ほか、SpotifyやAppleMusicなどの大手配信サービスも、「アップロードして収益を得る」という定義には入ります。ただ仲介業者が必要で、例えばTuneCore Japanがその代表。

いずれにしても、これらのサービスはすでにコンテンツが飽和状態であることに加え、宅録環境を整え、音源や映像を作成し、SNSで周知させて……と、実際に購入してもらうまでの道のりはやはり険しいでしょう。よほどバズりでもしない限りは手数料も痛かったりします。

 

では、「今すぐ稼ぐ」ことをいったん忘れて、別の視点から配信行為を考えてみるのはどうでしょうか。つまり、収益を度外視した、無料配信

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音楽家が動画や作品、コンテンツを「無料」配信することの意味

ぶっちゃけると、何にも考えずに行う無料配信は、虚無です。

例えばTwitterでの練習動画的なアレ、何を隠そう私もやってたのですが、私ごときがやるなら演奏のクオリティより映像の演出や編集・告知方法のほうがよっぽど大事になってくる。だって、ヨー・ヨー・マ氏もレイ・チェン氏も出し惜しみゼロで弾くわ喋るわ、ヒラリー・ハーン氏はもう何年間もヴァイオリン・ケースから練習風景をお届け中だし、そして何より、配信ですでに多くの視聴者を獲得しているYouTuber音楽家たちがいっぱいいるわけです。

要するに、こっちだってとっくに飽和状態、彼らとおんなじことをいま、ここだけでやったって、たいした意味もねえのでした。(これはコロナ云々以前から言われていたことではあったけれど)

無料で配信してもタダでは終わらせない──音楽家としての立ち位置を作り、示す

だからここで、我々は、SNSの「気軽な」「無料配信」において、何を目的とするのか、いまいちど考えたほうがいいんじゃないか──というのが、私の考えです。

もちろん、演奏家自身のモチベーションを保つこと、せっかく準備していた曲目をお蔵出しすることを目的にしてもいいけれど、それだけでは絶対、だめだ。なぜかというと、右へ倣えで似たようなクオリティのものを公開するだけでは、誰にも爪痕を残せないどころか逆効果かもしれないし、「音楽はネットでタダで聞けて当たり前」の風潮を後押しするだけで終わってしまうから。

こういった傾向について警鐘を鳴らしている人は、すでに多くいらっしゃいます。下記に一部を引用させていただきます。(※スレッドになっているので、元ツイートをすべてご覧になることをおすすめします)

それでもなお「無料」配信を行うとしたら、その目的はすなわち、あなたの音楽家としての立ち位置を確保し、示すことになるでしょう。

ブランディングとかセルフマネジメントとか、横文字だとちょっととっつきにくいのですが、すでに過酷なネット界隈にいまから突っ込んでいくなら、「音楽家としてのあなた自身」を示すほうが、たぶんいい。というのも、ネットにおいて、ともかく映像という媒体は、強いのです。ちょっとした練習風景でも、映像と音声のクオリティ、着ている服ひとつで、音楽家の姿とその音楽は、強く印象づけられます。

アイドルや人気YouTuberのような、広くウケている人の真似をする必要はなくて、それこそ先に挙げたような音楽家たちや、海外団体がいいお手本になってくれるのではないでしょうか。ひとりの音楽家として、あなたはあなたの音楽を、どんな映像を媒体に、どこの誰に向けて届けたいのか。音楽に「音楽家としての自分」など必要ない──というのであれば、それすらも動画配信で表現することができる。

つまり、漠然と演奏動画を公開するのではなく、ひとつの演奏会を考えるように、あなた自身のひとつの音楽プロジェクトとして、動画配信と真摯に向き合えばいいのではないか、と思うのです。

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無料の演奏動画配信において考えてみたいこと

音楽家としてのあなたの立ち位置を示し、ひとつの演奏会のように、動画(あるいは録音物)を配信する。ここから、その具体的な考え方・方法を挙げていきます。

1. どんな映像を作り、配信するのか

多少演奏に疵があったり、編集が簡単なものでも、連日10-30秒程度の演奏動画を上げるのか。とことん、演奏作品としてこだわったものを上げるのか。練習風景を撮るのか、演奏会のように撮るのか。風景やあなたの日常も交えた、ミュージックビデオ風に仕立てるか。そして、どんな視聴者を想定するのか。

動画やコンテンツを作り始める前に、ある程度方向性を決めておいて、実際にやってみてからまた調整してみる……の繰り返しがいいと思います。とくに視聴者をイメージすることは、次の配信媒体の話にも関係してきます。

2. 動画配信の媒体

YouTubeかTwitterか、Facebookか、Instagramか。インスタならストーリーか通常投稿か。YouTubeならプレミア配信という手もある。Twitterに投稿するとオープンで目に留まりやすい半面、埋もれがち。インスタのストーリーは24時間限定という特色を活かせるか。──などなど。

各種サービスによって客層は変わってくる。ということはつまり、あなたの音楽・動画に適さない環境もありえます。もし適さない環境にも提供するのであれば、なんらかの工夫が必要になってきます。

ちなみに、実際に再生してもらうまでの道のりが遠いのは、YouTubeだと思います。TwitterやInstagramのように、タイムライン上で「音楽以外の何かを探している最中」に流れてくることがないという点が大きい。

3. カメラアングル

カメラ1台の定点撮影だったとしても、撮影アングルをいろいろと試してみる。必ずしも正面から顔が見えている必要はないですし、ただ、多少引き気味に撮ったほうが、やべーもんが映っちまってもあとからトリミングできます。

4. スマートフォンの置き場所

広い部屋で撮るのはもちろん、スマホのマイクでも、すこし離れたところに置くだけでいくらか音がましになる、少なくとも音割れが回避できます。部屋の扉を開けるか閉めるか、棚を閉めるか、椅子をどけるか、ささいなことでも変わってくるかもしれません。録音アプリもいろいろあるのでお試しあれ。

5. 衣装

がっつりコンサート仕様でも、Yシャツでも、パジャマでも、コンタクトでもメガネでも、見かけの選択肢があることを忘れずに。基本的には舞台上と変わらないと思えば、見かけも一つの要素と考えていいのではないでしょうか。

6. 映像編集

映像素材が定点カメラのアングル1つだけであっても、編集次第で、視聴者を飽きさせない映像演出ができます。明るさ、コントラスト、彩度。備え付けのフィルターをかけてみるだけでもいいし、もちろん、素っぴんでも音楽さえよければそれでいいんじゃい、というスタイルだっていいわけです。こちらは定点カメラ・macのiMovieだけで編集したコンサート動画の一例。

場所を変えての2回公演だったため、映像素材は実質2つ使用しているが、編集自体はiMovieでBurnしたりトリミングしたりフェードしたり、の繰り返し。

なお、スマートフォンなら、iPhone・Androidともに「InShot」という無料アプリがとても使いやすいです。随所で広告動画が挟まれるけれども、無料で使わせてもらっているのでコーヒーでも沸かしましょう。

InShot - 動画編集&動画作成&動画加工

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7. 音声加工

手間はかかるりますが、音声を編集する。私はAudacity(リンク先はMac用。Windows用もある)を使っています。もちろん、スマホのアプリでも簡単なことならできちゃいます。

特にクラシック音楽の場合、デッドな音響が気になる人も多いかと思います。そういう場合は、音声加工も視野に入れた方がいいかもしれない。ノイズを除去するだけでも聴き心地はよくなります……というか、ノイズ除去だけでもやったほうがいいと個人的には思います。

「編集って自分の音を加工するんでしょ」──ということで、抵抗のある方もいると思います。ただ、たとえばせっかく写真を撮っても、いざスマホやパソコンの画面で見たら暗くてなんにもわからない、実物はこうじゃなかったのに……みたいなことがありますよね。結局、音声もたぶん同じことで(私もマスタリングなど偉そうなことは何も言えないのですが)、実際に自分が弾いていた、耳にしていた音に近づける、というつもりでやってみるとよいのではないでしょうか。

一方、すっぴんでもいい音楽はいい音楽になるので悩みどころですが……いちどやってみると、普段耳にしている録音物がどれだけ大変な工程を経ているかわかるし、抵抗があればあるほど、むしろ手を突っ込んでいい領域かもしれません。もちろん無理のない範囲で。

ちなみに、音声を編集するなら、スマホやパソコンのスピーカーだけでなく、ヘッドフォンやイヤフォンでの聞こえ方も確認してみてほしい。やるのとやらないので大違いです。

8. あなただけのロゴマークを作る

この機会に、Canvaなどのサービスを使って、あなただけのロゴマークをつくり、映像に忍ばせるのもいいかもしれない。ここぞというときのために練習しておいたサインとか。

ちなみに、Canvaは会員登録が必要ですが、ちょっとしたフライヤー作成や画像加工などにもってこいです。課金しなくてもじゅうぶんすぎるほどの機能なので、この機会にぜひ使い方を知っておくと便利。

9. 告知・公開のタイミング

いよいよ動画公開のとき。SNSでの配信告知は、フォロワーがもっともアクセスしている時間帯を狙いましょう。また、一度告知して不発でも、引用RTなりなんなり、別の時間帯を狙って再度タイムラインにあげると、意外と反応が増えたりします。プロフィールに固定ツイートをぶら下げておくのも吉。セルフRT乙? 必死アピール乙? 知ったこっちゃねえ、こっちは遊びじゃねえんだやっちまえ。

Twitter・プロフィール固定の例

10. 告知方法

また、それら告知の方法も人それぞれ。無言でタイトルだけ上げるのもよし、なにかひとことコメントをつけるもよし。イメージ画像や撮影風景を添えるのも素敵。ここがアイデアの見せどころです。

SNSでの宣伝方法やスケジュールについては、意外にもクラシック音楽以外の分野が参考になります。とくに映画やアニメ、漫画、ゲームのプロモーションは興味深いので、気になるところから追いかけてみてはいかがでしょう。

11. Twitterなど、SNSにあげる映像はコンパクトな長さで

SNSの場合、映像の長さは20-30秒くらいでじゅうぶんだったりします。半端に長くても最後まで見てもらえないことが多い。どうしても見せたいところだけを切り取って録画・編集してみましょう。

また、TwitterやInstagram用の演奏動画なら、開始後いきなり演奏が始まるくらいでちょうどいいと思います。トークや楽器を構える時間など、前置きがあると離脱されやすいです。

12. 大作は本編をYouTubeに、SNSでの告知はショート版で

とはいえせめて、1楽章分くらいはまるまる撮りたい、いや、全楽章撮りたい。そうしたら、本編映像をYouTube・あるいは先述の有料コンテンツとしてアップし、TwitterやFacebook、Instagramといった「導線」となるSNSには、やはり20秒程度のショート版を上げてみましょう。タイムラインをスワイプする手が止まるような、目に訴える映像を作るといい。

実例① Twitter告知

こちらがTwitterのショート版。映像は本編を使わず、サムネ画像のみ。情報量を少なくしても、どのURLをクリックすれば本編が見られるのか、くらいはわかりやすく誘導したほうが親切かも。

実例② YouTube本編

そして本編。YouTubeでは簡単な手続をクリアすれば、サムネイル画像を自由に設定できる。これも先述のCanvaなどで作ってみると案外たのしい。

13. 配信した動画の分析

個人的には、ここがいちばん重要だと思っています。

Twitterはパソコンから、Instagram・Facebook・YouTubeは、アカウントの設定次第で各種投稿の解析画面を閲覧できます。初めのうちは折れ線グラフと横文字の群れにとまどうかもしれないが、落ち着いて観察してみることをおすすめします。

YouTubeのアナリティクス・概要画面。ここからさらに、動画への流入経緯や視聴者層を確認できる。

どの時間帯に、どんな動画が何分間試聴されて、どんな客層に発見してもらえるのか。視聴者がこの動画を知るきっかけは、Twitterの拡散か、それともGoogle検索か。

まともなデータを得るためには何回もサンプルを取らないといけない=何本も動画をアップし続けなければいけないし、決して簡単な作業ではないけれど、動画投稿を継続するのであればぜひ活用を。

14. YouTubeの小技

  • YouTubeの説明文には、URLを自由に貼ることができる。HPやSNS、任意のURLをただ説明欄にコピペするだけでOK。
  • 同じく説明文に「02:11」などと時間を記載することで、指定時間にジャンプさせることができる。
  • 動画タイトルは邦題でもいいが、英文タイトルだけでも併記しておくと検索にひっかかりやすい。YouTubeの検索流入率をなめてはいけない。タグ設定も活用しましょう。
時間ジャンプ・URL貼り付けの例。緑で囲った部分みたいなこともしばしば起こる。

15. Twitterで動画を予約投稿する・動画から直接YouTubeへ誘導する方法(Twitter Media Studio)

これ知らなかったんですけど、めっちゃ便利なのでぜひ。パソコンのみ利用できるTwitterの機能「Media Studio」を使うと、ツイートの動画からYouTube本編へ、直接誘導することができます

さらに(画像や動画つきのツイート限定ですが)ツイートの予約投稿も可能。めちゃくちゃおすすめなのでぜひ活用を。

16. 「そんな音楽以外のガワばっか考えてないで音楽家なんだから音楽だけで勝負しろよ恥ずかしくねーのかよ」

はいそうです、もちろん、音だけ、演奏だけであなたが何者かを示すことができるに越したことはありません。が、ミもフタもない話、無名の人間がネットの海にほんの数十秒の演奏を投げたところで、波紋の1つも立ちゃしないわけです。よっぽどバズるような感動のエピソードがくっついてるとか、うっかりかわいいワンちゃん赤ちゃんが乱入しちゃった❤️とかじゃない限り。まあ自分でそういう演出を作るのもアリですけど。

あと、配信の是非はともかく、こういう地道な試行錯誤をほかでもない音楽家自身が放棄していたら、CDジャケットだってフライヤーだってプログラムノートだっていらなくなっちゃいますし、そうやって音楽と社会との数少ない接点をガンチュレスってきたから「お前らなんかに出す金はねーよ自己責任だ」と言われてしまうのではないでしょうか。

あとあと、これは想像にすぎませんが、国内外問わず、集客に成功している芸術家・芸術団体というのは、多かれ少なかれこういうことを考え、実行しているのではないでしょうか。ただ、後ろ盾のない個人音楽家だと演奏や作曲などに追われながらすべて行わなくてはならないので、そのバランスが難しいところです。

要するになんでもいい、やるならやるで、そのための思考を止めないこと──それが、たぶん、我々にできる最後の仕事だと思います。

参考リンク集(2020/05/15追加)

実際に配信している音楽家の方も、多くの情報をウェブで公開・シェアしています。ぜひご参考に。

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おわりに:「音楽家なら配信できて当たり前」ではない

最後に、ここまで書いておいてなんだけれども、「音楽家がオンラインでコンテンツを提供するのは当たり前」という認識も、問題だと思う。とくに無料での配信行為は。

感染症の流行下にあっても、スマホひとつあれば音楽を提供でき、享受できる。それはすばらしいことだ。けれども、そこでフリーランスの音楽家が立ち位置を確保しようとしたら、どうしたってこれまで書いてきたような「音楽以外」の努力が必要になってくる。ただでさえ「音楽」の場を奪われ、疲弊している音楽家たちにそれを強いることは、だれにも、できない。

配信とは、あくまで、「演奏会もできない、仕事も補償もない状態のフリーランスの音楽家」が、すこしでもこの先へ何かを見出すための、1つの提案にすぎない。元々、音楽家がネット上にその身を晒し始めた目的は、自分の演奏会にきてほしいとか、レッスンを受けてほしいとか音源や楽譜を購入してほしいというものだったと思う。

ところがどっこい、いま、世の中どこを見渡しても演奏会なんてできやしないし、音源や楽譜を買ってもらおうにも売り場がなく、オンラインレッスンもなかなかスムーズにはいかない。

「あの公演はいつ」「この生徒さんはいつまでいてくれるだろう」「いま準備している曲はいつ弾けるだろう」──と思いながら、ひたすら自宅にこもり、新型コロナのニュースを耳にしながら準備している音楽家たちは大勢、それはもう大勢いるはずだ。

重ねて言う、音楽家全員が配信をやらなくちゃいけないなんて理屈は、どこにも存在しないこの記事でも書いたけれど、新しいことをいち早くやったからエライわけでも、新しいことができないから悪いわけでも、ない。また、音楽ではなく「あなた自身」をコンテンツとしてネット上に差し出すことは、決して、気持ちのいいことばかりではない。

ただ、今回の件で、音楽界隈はいろんなことが露呈してしまった。音楽をしていない人から見た我々のいる世界が、どれほど「余分なもの」に映っているのか。

けれどもそこで、「おまえらはなんもわかっちゃいない」と我々が上から目線で決めつける行為は論外で、音楽や文化の土壌が違いすぎる他国を羨み、引き合いに出しても仕方ない。「音楽なんだからこういうときは仕方ないでしょ」──という社会にとってはおそらく、音楽がどうとか文化の価値がどうこう以前に、音楽に関わる人間、つまり、我々が実在することが、想像できないのだと思う。

だからいま、音楽と社会の接点、そこにあなたが立ち、提案する。他でもない音楽家としてそこに立つ、あなたの存在を示す。「音楽の力」とか、「こんなときだからこそ音楽は救いになる」とか、そういうきれいごとでなくていい、私たちが今ここにいることを、ただ示す。

配信行為は、その手段のひとつでしかない。なんなら、これからは一周回って、露出しない音楽家という立場が貴重になってくるかもしれない──というか、そうであってほしいとすら思う。だっておれほんとはそういう音楽家になりたいもん。

ここに書いたことが、わずかでもあなたの助けになりますよう。

 

◆2020/03/31 追記

“テレワーク・自宅学習支援”AppleがFinal Cut Pro X/Logic Pro Xを無償で – funglr Games

ドンピシャすぎる。林檎様から、まさかのプロ仕様映像編集ソフトが無料配布とのこと。どうしよう、やるしかないよな……でもいちど触ったらもう戻れないよな……と二の足を踏んでいる私を踏み越えてお試しください。

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