MUSIC

「クラシック音楽ができるなら即興演奏もできる」という仮説について

即興演奏やってみない?」と持ち掛けたとき、ダントツで反応が悪いのがクラシック音楽を学んでいる人たちなのだけど、クラシック音楽ができるなら即興演奏もできると思うよ、という話。

そもそも、クラシック音楽だって即興演奏じゃね?

クラシック音楽は『譜面』があるから形にはまっている」とはよく言うやつですが、たとえばそのクラシックの本番。

譜面通りで練習通り・リハーサル通り、何もかもが計画通り──なんて経験が、おありでしょうか。少なくとも、私はゼロです。

自分が思い描いていたとおり、仲間と打ち合わせたとおり、「まったく想定通りに音楽が進行する本番」なんて、演奏者が人間である以上ありえないと私は思っています。つまり、 多かれ少なかれ、クラシック音楽は即興演奏的な要素を含んでいる、と。これは、かつてバッハやベートーヴェンだって即興演奏を得意にしていて〜云々という話ではなく、実際、現代のお話です。

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クラシックと即興演奏の共通点──聴いて考えるということ

そして、「本番になったらリハーサルと違う音楽が生まれてしまった」というとき、頼りになるものはいったい何か。

もちろん、演奏者自身がいままでさらってきた練習量とか、根性とか、いろいろあるわけですが、最終的にいちばん頼りになるのは、耳と脳ミソです。何かが起きた時、演奏者は多分、いま、ここで、何が起きているのかを聴いて考えるんじゃないかと思います。

いつもと違う音楽。いつもと違う演奏。いつもと違う空気。

それらを本番中、演奏しながら「聴く」こと。

聴いている音が表現したいこと・行きたい先を「考える」こと。

そしてこれは、即興演奏でも全く同じです耳の使いかたも頭の使いかたも、クラシック音楽と即興演奏は、基本的に同じです。違いといったら譜面の有無くらい。

ということはつまり、

「クラシック音楽をやっているひとは、即興演奏もできる」

ということになる、ような気がしてきた…………してくるよな……たぶんする…………しますよね?

アンサンブルが苦手な人こそ即興演奏はガチでオススメ

「いや、そもそも『周りの音を聴く』ことがニガテなんです」「聴いてるつもりだけど、周りがなにを考えてるのかわからないんです」という人には、なおさら即興演奏をオススメします。

譜面がないぶん、周りの音や自分の音に集中できるからです。

譜面があるとどうしても自分が弾くことに気を取られてしまう、譜面に頼ってしまう。が、即興演奏ではそのよりどころが「譜面」から「音」に移ります。自分の耳と脳みそだけが頼りになるわけです。

もっと言えば、即興演奏では人の音を嫌でも聞かざるを得ません。譜面があれば、ある程度の意識が共有できる(本当にある程度ですが)けれども、譜面がないゼロの状態では、「今この音楽がどこに向かっているか」「今何が起きているか」を知る手がかりは、もう、自分と他人の音にしか存在しない。

耳をダンボにして人の話を聞かないと音楽ができない。確かに、そういう意味の難しさは、即興演奏にあります。

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バロックでもロマン派でもない、「自分のことば」

「でも、楽譜もないのになんの音を弾けばいいのかなんてわからないし~……」

という人は、ちょうどいい機会なので、「クラシック音楽」という服を脱ぎ捨て、裸一貫、「自分のなかの音楽」=「自分のことば」と向き合ってみましょう。

 

あなたが「自分の音楽」=「自分のことば」だと思っている、クラシック音楽。でも、それだけではない。大抵の人は皆、クラシックでもジャズでも邦楽でもない、「自分のことば」を持っています。

さらに言えば、即興演奏では、たとえ同じ「クラシック語」を話す人同士でも、違う「ことば」で対話することになります。だって、モーツァルトが好きな人とバルトークが好きなひとでは、当然、話すことばが違うわけで。

そうしたふたりが即興演奏で対話したとき、どこかで、臨界を超える瞬間がかならず訪れます。──それまで頼っていた「異国のことば」では対処しきれなくなる瞬間が

 

その背水の陣に追い込まれたときこそ、あなたが「自分のことば」を見つけるチャンスでもある。即興演奏の中で、一度、自分の音楽を探してみてはいかがでしょう。

「即興演奏だから」と、いつもと違うことをする必要はない

「即興演奏だから即興をやる」と考えると、普段何をしている人でも、自然と即興演奏が怖くなってしまうと思います。なので、いつもと同じように音楽をやる、と考えたほうがいいんじゃないかな、というのが私の考えかたです。

ちなみに、「聴いて考える」なんてクラシックでも即興じゃなくてもおんなじじゃん、と突っ込まれるかもしれません。おっしゃる通りです。今回はあえてクラシック音楽と呼ばれる音楽を専門にする人に絞り、その音楽と即興演奏の共通点にフォーカスするつもりで書きました。ご容赦ください。

要するに、即興演奏だから特別なことなんて、何にもないよ──というお話です。まだまだおっかなびっくりな人は、家でこっそり、3分間一人即興演奏をするとか、その辺から始めると良いかもしれません。

 

いま、即興演奏について 1. 私がいわゆるSNS界隈に足を突っ込み、喚き立てるようになったのは大学院2年生の頃で、あのとき何があったかといえば、ただもう、...
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加藤 綾子
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