
Photo by Kazutaka Monden
ヴァイオリニストのためのフィクション
加藤綾子 ソロ・リサイタル・シリーズ
Fiction for violinist – AYAKO KATO, Solo recital series
加藤綾子、2年ぶりの無伴奏リサイタル
「このヴァイオリニストはすべてフィクションです。」
クラシック〜現代音楽作品の実演や、即興パフォーマンスなどを通して、
他者と“わたし”、交錯する身体を考察する
ヴァイオリニスト・加藤綾子による独奏リサイタル。
さまざまな国、時代、スタイルの作品(フィクション)を通して、
誰かが見ていた身体とわたしの身体をまなざす。
◆日時
2025年4月4日(金)
昼の部・13:00開演(12:00開場)
夜の部・19:10開演(18:30開場)
*各回90分程度(休憩込み)の上演時間を予定
**昼の部は未就学児入場OK!
◆場所
小黒恵子童謡記念館
東急田園都市線 ・二子新地駅東口より徒歩約11分
高津駅西口より徒歩約13分
◆演目
テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジアより
サーリアホ:ノクターン
林光:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
ヴァインベルク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番
小栗舞花:生前のバイオリン、こないだの人(初演)
◆チケット
一般 3000円/学生 500円/未就学児 入場無料(昼のみ)
teket https://teket.jp/10243/43666
◆後援
洗足学園音楽大学同窓会/都立芸術高等学校同窓会 緋水/「音楽のまち・かわさき」推進協議会
◆DATE & TIME
April 4, 2025 (Friday)
LUNCH SESSION: 13:00 (doors open at 12:00)
DINNER SESSION: 19:10 (doors open at 18:30)
*Each performance will last approximately 90 minutes (including intermission)
**Preschool children are allowed in the daytime performance!
in Keiko Oguro Children’s Song Memorial Hall
◆PROGRAMME
Telemann: From 12 Fantasias for Solo Violin
Saariaho: Nocturne
Hikaru Hayashi: Sonata for Solo Violin
Weinberg: Sonata for Solo Violin No.1
Maika Oguri: The Late Violin, The Recent One(World Premiere)
◆TICKET
General 3000yen / Students 500 yen / Preschool children admission free (lunch only)
teket https://teket.jp/10243/43666
◆SUPPORTED BY:
Senzoku Gakuen School of Music Alumni Association / Tokyo Metropolitan High School of Arts Alumni Association Hisui / “Ongaku-no-Machi Kawasaki” Promotion Council
TEXT

小栗舞花『生前のバイオリン、こないだの人』
譜面冒頭「はじめに」より
文:小栗舞花(作曲家)
Text by Maika OGURI (Composer)
この譜面には2人で演奏される音楽がおさめられていますが、 「マイナスワン」で演奏されることを正式な上演スタイルとします。よりカジュアルな上演スタイルとしてデュオでの上演も可能です。
演奏家は、日頃、いろんなことに気を配って演奏をします。最後の響きが消える瞬間までしっかり聴いている演奏とそうでない演奏はちがいます。これから発するその一音をどこまで響かせるイメージを持っているかで音は変わります。演奏家の隅々までの気の配り方は聴衆にも伝わる、と教わったことがあります。
同じように、何を込めて演奏しているかによって音は変わります。誰に向けて音を発しているかによって音は変わります。今この空間の何を聴いているのか、何に反応して音を出すことになったのかによって音は変わります。見えないものの声をきき、見えないものに促される、その発音や耳の指向の特殊さがこの音楽作品の核をなします。
この作品では、音や人は決して観客を喜ばせるためにありません。良い音楽・良い音は観客のためにあるのではなく、自分自身の歓びのためにあります。そのつもりで発露した音楽に観客は「出会う」のです。その「出会い」を観客は楽しむことができます。
さいごに、編成における「ヴァイオリニスト」は世の中に「ヴァイオリニスト」がいる限り続く代替可能な存在ですが、 「小栗舞花」は長くてもたった数十年しか生きません。「小栗舞花」が過去の人になったとき、音楽を辞めていたときなど、 「小栗舞花」の不在をもって、この作品は本当の意味で「マイナスワン」になります。そのときは、あなたなりの「小栗舞花」をあなたのそばに降ろしてください。
……では、 「ヴァイオリン」と「ヴァイオリニスト」はどちらが長生きするでしょう?
解説:加藤綾子、小栗舞花(新作)
Text by Ayako KATO* *in Japanese only
プログラムノート──
ヴァイオリニスト、あるいは他者というフィクションについて(文:加藤綾子)
リサイタルとは、ある種の儀式の場だ。そこに立ち上がる肉体は、生々しさを伴いながら、彼ら/彼女らではない身体を映し出す。自分自身でありながら自分自身ではない、ぶれた・ずれた・ねじれたフィクションがそこにある。
今回のプログラム中、もっとも振付的におもえる作品がサーリアホ「ノクターン」だ。彼女の譜面には、詳細な弓の位置、強弱が記載されている。“指板のほうで”“駒のほうで”。ほとんど無音を意味する「◯」のマーク。彼女が示したとおりに身体を置いていくだけで、音楽が鳴る。1本の開放弦が含むいくつもの倍音は、やがて200年前の、もっともわたしたちから遠い時代・国の架空──テレマン「12のファンタジア」を呼び寄せる。
現実は、ことばによって形作られる。わたしにとってもっとも現実的で身近なことばを夥しく残した林光は、「独奏ヴァイオリンのためのソナタ」についても、詳細な成り立ちを語っている。単一楽章の楽曲として、インジフ・パズデラというヴァイオリニストによって初演されたこと、その後改訂を経て全3楽章の作品になったこと、それぞれの楽章は“パズデラ氏の要望によって”「Labyrinthe」「Air」「Ciaccona Vivo」と名付けられたこと──ソナタとは、複数の楽章を持つ器楽のための楽曲を指し、ソナタ形式の楽章が含まれることが多い。が、今回演奏する2曲の「ソナタ」は、いずれもソナタ形式の影は薄く、いくつか重要なテーマを示しながら、作曲者の指が、声が、頭が導く道なりを行く。
全部で5楽章からなるヴァインベルク「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番」は、冒頭で示されたテーマが鍵となる。何度も打ち鳴らされる重音の連なり。低音から高音へ、下から上へ、時に信じられない跳躍をあっさり書いてのけながら、それでもヴァインベルクは常にうたを忘れない。どんなにフォルテの「f」を重ねても、不規則な黒い音符を書き連ねても、常にそこにはうたがある。5楽章に及ぶ長いダンスの果てに、ヴァインベルクはもういちど、最後のうたを叫ぶ。
楽曲解説──
「生前のバイオリン、こないだの人」について(文:小栗舞花)
昔々、身体の一部だったバイオリンはもうここにない。
いつもの部屋の木の柱。最近、木目に目がひきよせられる。弾いたことのないウクレレの丸み、なぜだか左の鎖骨を寄せたくなった。
失ったものの痕跡はどうしてこんなに強く残るのだろう。
部屋にはいないはずの人がいる。いないはずのバイオリンがある。
わたしは二つの不在と共に生きる、一人のバイオリニストだ。
※本作品は、昼/夜公演による演出の違いがございます。
昼公演:小栗舞花本人が「いないはずの人」としてパフォーマンスに参加します。
夜公演:加藤さんがソロで演奏します。架空の小栗(不在の人間)とのデュオを表現します。
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