ベルギー・ブリュッセルのモネ歌劇場にて開催された、オネゲル作曲「火刑台上のジャンヌ・ダルク」公演のちょっとしたレポートと、関連情報まとめ。
オネゲルの「ジャンヌ・ダルク」、あるいはモネ歌劇場に興味のある方、「えー海の向こうの歌劇場の公演とか関係ないわ」という方、誰かしらの参考になれば。
[jin-iconbox01]筆者はまだフランス語初心者のため、関連記事やベルギーでの報道については、辞書片手に、出来るだけ私見を交えず、淡々とまとめるにとどめたつもり、ですが、誤りや思い込みがあると思います。お気づきになられた方はご一報いただけると幸いです。
[/jin-iconbox01]Table of Contents
前置き:モネ歌劇場『ジャンヌ・ダルク』のストリーミング配信について(※追記: 2020.01.05.)
今回の「火刑台上のジャンヌ・ダルク」は、2019年11月25日〜2020年1月5日まで、YouTubeにてストリーミング配信されます。
ということはつまり、この記事を読んでいるあなたも、大野和士/ロメオ・カストルッチ版「火刑台上のジャンヌ・ダルク」を、YouTubeで観ることができます。
今の世の中、ことさら強調するようなことでもないかもしれません、が、このページをわざわざ覗きに来てような人はもう、ぶっちゃけこんな記事読まなくていいからモネの公式YouTubeを観たらいい。2019年11月25日〜2020年1月5日です。お忘れなく。
※2020.01.05追記……メールにてご指摘いただいたのですが、2020年1月1日時点で、「ジャンヌ・ダルク」はストリーミングされていなかった模様です。もんでゅっ!混乱させてしまい申し訳ありません。この記事を書いたときには、公式にて確かにアナウンスがあったと思うのですが、幻覚を見ていたのかもしれない。OH….
2019年11月・Romeo Castellucci版『火刑台上のジャンヌ・ダルク』基本情報
オネゲル『火刑台上のジャンヌ・ダルク』について知りたい人は、とりあえずウィキペディア(仏語版)など。
今回のプロダクトは実は2回目。前回の公演もてっきりモネ歌劇場なのかと思っていたら、リヨン歌劇場で行われていた模様です。
[jin-iconbox07]Jeanne d’Arc au bûcher | La Monnaie / De Munt
モネ劇場公式サイトより。演出、出演者詳細など、基本的な情報はほとんどこちらで確認できると思います。
[/jin-iconbox07]レポート:知識ゼロで見た、モネのジャンヌ・ダルク
モネ歌劇場は、事前にWEB上でメイキング映像やらインタビューやらを惜しみなくばらまいてくれるのですが、今回はあえて初見・ほぼ知識ゼロでGO。「へ〜オネゲルってオペラ書いてたんだーしかもジャンヌじゃんーしかもモネじゃんー面白そう」くらいのノリ。
ちなみにモネ歌劇場の公演、30歳以下は割引が効くので、今回は奮発して30€(元値段は50€)のちょっといい席を買いました。舞台、めっちゃ見える。指揮者、後頭部見える。オケピ、全くみえねえ。電子音響係さんと相席。
ジャンヌ・ダルク、奮発していい席を買っただけのことがあった。なんとミキサー?のすぐ隣です。テンションブチ上がる。 pic.twitter.com/cfZFq7wpCX
— Ayako KATO violin. (@akvnimp) November 5, 2019
プログラム
10€か12€だったか、それくらい。内容を考えたら安いと思います。むかって左から、出演者紹介・リブレット・プログラムノートの順。
プログラムノートの内容は、
- 指揮者インタビュー
- 演出ノート
- ライター寄稿(複数)
- 写真いっぱい
演出についてもちゃんと書いてあるよ!(ぜんぜん読めてないけど!)
すべてフランス語・オランダ語の両方で書かれているので、そのぶん分厚くなってるだけと言えばそれまでですが、紙質といいデザインといいコレクター要素がやばいです。毎回買っちまうだろこんなの。
[jin-iconbox01]歌劇場内での買い物は現金のみ。(2019年11月時点)バンコンタクト含め、カード全般使えませんでした。終演後、夜のATMに駆込み現金を引き下ろしダッシュでリターンする羽目にならないよう、どうぞ現金をお忘れなく。
[/jin-iconbox01]演出について
以下、現代演出シロウトの視点でお送りします。
女子学校の授業風景から始まる「ジャンヌ・ダルク」。テスト中?ヒソヒソ話しながら机に向かう生徒たちと、その生徒たちを見回る教師。チャイムが鳴るや否や下校開始。
そして、生徒も教師もいなくなった後、ちょっと足を引きずってる?くたびれた清掃員っぽいおじちゃんが現れる。「なんだこれは……」という私を他所に、教室のお片付けを始めるおっちゃん。机を押し出すおっちゃん。椅子を放り投げるおっちゃん。ドアに鎖をかけるおっちゃん。どんどん息が荒くなるおっちゃん。異変を察して戻ってきた教師たちに銃を突きつけるおっちゃん。この間、全くの無音。「やべえよ……」的な空気が客席に満ち始めるも、困ったことにこのおっちゃんがジャンヌなのだった。
その後、どのタイミングで演奏が始まったのかは忘れました……照明が一個だけ点滅したあたりだったか、神父役の教師が入ってきたところだったか……
冒頭の時点でうっすら感づいてはいたが、歌手及び合唱は一切ステージに出てこない。合唱隊や歌い手はブチ切れなかったのだろうか、大丈夫だろうか。
ドアの向こうからジャンヌと対話する神父、ところがちゃんと廊下での教員たちの芝居が続いていて、時々、心配してやってきた他の教職員らや警察と(ジェスチャーのみで)会話したりする。完全に立てこもり犯を説得しようとする教師と職員の図である。が、話している内容はジャンヌ・ダルク。つまり……どういうことだってばよ……??
最期は自身が掘り返した地面へ沈むジャンヌ。
本編終了後、教室に入った警官たちが、ジャンヌもとい清掃員によって魔改造された掘り返された床を茫然と見下ろして終了。
個人的な感想
ものすげえ面白かったです。こちとらモダン演出シロウトですが、わかるようでわからない、絶妙な塩梅でいろいろ脳味噌フル回転させながら鑑賞できました。おかげで終演後の答え合わせが今も全然終わりません。
途中、(どんな意図はわからないが)ふふってなってるお客さんもいたけれど、最初の「やべえよ……やべえよ……」という観客の空気が、少しずつ盛り上がって引き込まれていき、最後は拍手喝采でした。スタンディングオベーションもあったと思う。うろ覚え。
反面、演出ばかり気にしてしまって音楽にぜんぜん注意を向けていなかった……反省。これは決して演出のせいだと言いたいのではなく、私自身の慣れとか経験の問題です。もったいないことをした。
机をゼエハア言いながら押すジャンヌ、ロッカーから出した旗?を身に纏うジャンヌ、足や顔を緑のペンキで塗りたくり歌舞伎役者のような手つきで「NO!」と自分の罪を否定するジャンヌ、箒にまたがりぴょんぴょん舞台を跳ね回るジャンヌ、一糸纏わぬ姿で、髪を振り乱し、地面を掘り返しながら「死にたくない」と叫ぶジャンヌ。全編通して凄まじい変貌を繰り返したジャンヌ役のAudrey Bonnet、本当にすげかった。素晴らしかった。何なら私は彼女に全てを持っていかれました。もっといろんなことを勉強しないといけません。
反響、報道など
rtbf.be
モネ歌劇場提供の「ジャンヌ・ダルク」の演出について、la Fédération Pro Europa Christianaというカトリック教会組織?から嘆願書が提出された、という報道。
[jin_icon_pen color=”#8796b7″ size=”18px”]Opéra : Une “Jeanne d’Arc” obscène (rtbf.be)
また、この抗議に関連して、モネ公式サイトに掲載された記事もあります。こういうのを見ると、どこにいようと他人事ではないなと思います。
SNS
Twitterは(今の所)あまり見かけませんが、Facebookの公式投稿へのコメントや、Instagramではけっこういろんな反響が湧いています。
ご興味あれば各SNSにて、#monnaie2019 とかJeanne d’arc au bûcherとかで検索すると幸せになれるかもしれません。
モネ歌劇場・公式の映像や記事などまとめ
モネ歌劇場公式の情報まとめ。まずは公式WEBマガジン「MMM Online」から。
MMM Online
ジャンヌ役・オドレー・ボネ(Audrey Bonnet)氏のインタビュー。
[jin_icon_pen color=”#8796b7″ size=”18px”]Welcome back, Maestro ! | La Monnaie / De Munt
タイトルまま、大野和士氏について。
[jin_icon_pen color=”#8796b7″ size=”18px”]Sur la même longueur d’ondes | La Monnaie / De Munt
電子楽器「オンドゥ・マルトロ」奏者(Ondeste)・Philippe Arrieus氏へのインタビュー。この楽器、実際に客席で生オケの中にある響きを聴くとそんなにギンギンではなく、むしろ程よい彩りな感じで楽しかったです。Ondes Martrotの発音がこれであっているのかは知らない。
[jin_icon_pen color=”#8796b7″ size=”18px”]Jeanne d’Arc au bûcher | La Monnaie / De Munt
Serge Simonart氏による批評。モネ歌劇場の説明によると、ジャンヌ・ダルク公演後12時間もたたないうちに彼からの批評がメールボックスに突っ込まれていたらしい。champignion de boisってなに……
La Monnaie De Munt – YouTube
メイキング映像・ティザー映像などは、こちらからまとめて閲覧できます。(後述のMM Onlineからも見られます)PVとかいちいちカッコイイよなあほんとうに!
モネ歌劇場について─WEBマガジンが沼
最後に、モネ歌劇場についてさくっと。
アクセス
モネ歌劇場が擁する会場はいくつかあり、上記は本拠地「モネ歌劇場」。今回のジャンヌ・ダルクもここ。ブルッセル中央駅から徒歩10分、都会の真っ只中です。すぐ近くにAdagio Musiqueという楽譜屋もあって、たまに投げ売りとかしてる模様
ブリュッセルの楽譜店、見たことも聞いたこともない楽譜が投げ売りされてて大興奮、勢いそのまま突入した2軒目は正価であることを失念しこのZAMA、1軒目もよく見たら買った覚えのないサン=サーンスとか計上されてますが、後悔はしていない。いろんなVn二重奏曲があってびっくりしたよ!!! pic.twitter.com/rBLVtRN7MP
— Ayako KATO violin. (@akvnimp) October 26, 2019
公式サイト
そして、モネ歌劇場の公式サイト。これが個人的にとっても沼。リンクをちょっとだけ貼っておきます。
- モネ歌劇場・公式サイトトップ
- モネ歌劇場・芸術監督、オーケストラメンバーなど
- モネ歌劇場・会場について
- MMM Online(モネ歌劇場の公式マガジン『MMM』のweb版的立場)
WEBサイトのデザインが非常にカッコ良い上、中身がみっちり詰まっている。特に「MMM Online」は掘り始めたらキリがない。インタビュー記事やら裏話やら、惜しみなくアーカイブしてくれています。もちろん、英語・フランス語・オランダ語の3カ国後対応。
SNS
SNSは英語。Instagramなんかも超カッコイイ。公式によるコメントへの返信曰く、この馬は本物じゃないらしい。
https://www.instagram.com/p/B4ki1Qmgk-5/
これはジャンヌじゃないけど、舞台装置を製作している映像。単純にすげーってなる。
https://www.facebook.com/201091721296/posts/10156537846616297?vh=e&sfns=mo
また、これらの広報が関係しているのかは存じませんが、
ベルギーの歌劇場が若者を惹きつけている。ブリュッセルのモネ劇場では観客数増大(昨年度の座席稼働率94%、ストリーミング配信も加えると観客数25万人)、オペラ・フランダレン(アントワープ、ゲント)の観客年齢が若返った。(昨年度比で平均年齢53から46歳に、若者の占める率が7から21%に変化。) https://t.co/SokRmxoyKJ
— Dido Regina (@didoregina) September 28, 2019
というツイートもお見かけしました。元記事はこちら(オランダ語)。オランダ語。おれあさっぱりわからねーです。
[jin_icon_pen color=”#e9546b” size=”18px”]Opera is hipper dan ooit, ook bij jongeren. Hoe komt dat? | VRT NWSそもそもなんでこんな記事書いたの?モネのステマですか?
- 「モネのジャンヌめっちゃ面白かった」→「何なら初めて見たモネ提供の『Le Silence des ombres』もめっちゃ良かった」→「つまりモネ歌劇場めっちゃ面白い!アツい!」→「いろんな人にオススメしたいけどおれ正直フランス語なんとなくしかわかんないし無責任なこと書けない」→「じゃあとりあえずお勉強がてらggって関連情報まとめるか」
と言うわけで、次は何を観に行こうかな。室内楽も良さそうです。
https://www.instagram.com/p/B42eHNmArF5/?utm_source=ig_web_copy_link