20世紀を生きた巨匠ヴァイオリニストたち─インタビュー・著作まとめ

20世紀前後に活躍した巨匠ヴァイオリニストにまつわる証言/インタビュー/自伝まとめ。※は手元にないもの。「巨匠とか誰が決めたんだよ」「他にもいっぱいおるわ!」とか、色々おっしゃりたい方もいらっしゃると思いますが、とても個人では追っつかないので、ご容赦願います。

イザイ、ハートマン、エディー・ブラウンほか『ヴァイオリン・マスタリー 名演奏家24人のメッセージ』

タイトル ヴァイオリン・マスタリー 名演奏家24人のメッセージ
原題 Violin Mastery: Interviews with Heifetz, Auer, Kreisler and Others
著者 フレデリック・F・マーテンス(Frederick H. Martens)
訳・監修 訳:角英憲 監:木野雅之
出版社 全音楽譜出版社
初版年月日 2017/01/15(原語版:1919?)
備考 電子書籍アリ(Kindle・楽天kobo)

「ヴァイオリニストはパンのようにヴァイオリンを演奏しなければなりません」

──E.イザイ

 

24人ものヴァイオリニストのインタビューが目白押し。出演者は下記の通り(五十音)。

  • アーサー・ハートマン
  • アドルフォ・ベッティ
  • アルバート・スポルディング
  • アレクサンダー・サスラフスキー
  • エディー・ブラウン
  • エドムンド・セヴァーン
  • ウジェーヌ・イザイ
  • グスタフ・サンガー
  • サミュエル・ガードナー
  • ジャック・ティボー
  • セオドア・スピアリング
  • ティヴァダル・ナーシェ
  • デイヴィッド・ホッホスタイン
  • デヴィッド・マネス
  • トーシャ・ザイデル
  • ハンス・レッツ
  • フリッツ・クライスラー
  • フランツ・クナイゼル
  • マクシミリアン・ピルツァー
  • ミッシャ・エルマン
  • モード・パウエル
  • ヤッシャ・ハイフェッツ
  • レオポルド・アウアー
  • レオン・サメティーニ

……ここだけの話、けっこう演奏聞いたことない人いるわ……勉強しよ……

トップバッター・ティボーさんがチャイコンをボロクソに言ってるのほんと好き。和訳も新しく、2019年現在でも結構入手しやすい。原著が100年前なのもすごいが、向こうでも今だに読まれてるってほんとかなあ。

ユーディ・メニューイン/ウィリアム・プリムローズ『ヴァイオリンを語る』

タイトル ヴァイオリンを語る
原題 Violin and Viola (?)
編著者 ユーディ・メニューイン/ウィリアム・プリムローズ (Yeudi Menuhin / William Primrose)
訳・監修 訳:内田智雄
出版社 シンフォニア
初版年月日 1988/09/??(原著:??)

メニューインとプリムローズというめたくそレジェンドな共著。メニューインはこの他にも結構な著作が和訳されていて、こちらにはマスタークラスのトランスクリプションまで載っている。むしろ、後半のプリムローズが見逃せない。ヒンデミットがテニス好きなのを知ったのはこの本のおかげ。

わりと訳が古い……というか、たまにガチで意味不な場面があるのが難点。さすが巨匠、話す内容がぶっ飛んでいるのかもしれない。メニューインがどうやって楽曲分析をしているのか、俺にはとうとうわからずじまいだったぜ……誰か解読できたら教えてください。20世紀の巨匠、ヴァイオリンを語りすぎ問題。

レオポルド・モーツァルト『ヴァイオリン奏法』

タイトル ヴァイオリン奏法 新訳版
原題 Versuch einer gründlichen VIolinschule
編著者 レオポルト・モーツァルト (Leopold Mozart)
訳・監修 訳:久保田慶一
出版社 全音楽譜出版社
初版年月日 2017/05/12(原著:1756)

20世紀じゃないけど気がついたら手が滑ってた

最近、新訳も出て勢いに乗っているヴォルフガングパパの、言わずと知れた古典教本。実際の演奏法として参考にするかどうかはともかく、ヴァイオリンやるなら持っていて損はしない……かも。

https://ayako-kato.com/etude

オイストラフ、シェリングほか『アート・オブ・ヴァイオリン』

タイトル アート・オブ・ヴァイオリン
原題 the art of violin
監督 ブリュノ・モンサンジョン(bruno monsaingeon)
出版社 ワーナー・ミュージック・ジャパン
初版年月日 2001/09/27

ちょっとずるいけどDVD。我が家に初めてやってきた「クラシック」的映像で、思い出の品なので許してほしい。各ヴァイオリニストのメンコンがつぎはぎされて流れる冒頭でもう目頭熱。ギトリスがめっちゃ元気そうで何より。

ほんの数分程度だけど収録されている、メニューインのバッハのシャコンヌがメタクソ好きだった。擦り切れるほど観た。中古でも買い。

グァルネリ・カルテット『クァルテットの技法』

タイトル クァルテットの技法
原題 The art of quartet playing
編著者 グァルネリ・クァルテット/デヴィッド・ブルーム(Guarneri Quartet / David Blum)
出版社 Cornell University Press
初版年月日 1987
備考 邦訳絶版。原著は電子書籍版もあり(Kindle・楽天kobo)

グァルネリ・クァルテットへのインタビュー。残念ながら和訳は絶版……なのだがマジでこれは面白い。ベートーヴェン・Op.131を、各パートがどうやって/何を考えて/演奏しているのか、なんてのを譜面付きで話してくれたりする。最高かよ。

英語版がペーパーバックで買える、どころか電子書籍で読める。譜面あるし、ヴァイオリンやってればだいたいなんとかなるってへーきへーき。

ジャック・ティボー『ジャック・ティボー フランスのヴァイオリニスト』

タイトル ジャック・ティボー フランスのヴァイオリニスト
編著者 クリスティアン・グボー(Christian Goubault)
訳・監修 訳・村上和男
出版社 全音楽譜出版社創栄出版
初版年月日 1997/05/31(原語版:???)
ジャック・ティボー フランスのヴァイオリニスト

画像がなかったので。今時珍しい箱入り仕様。

証言というより伝記になってしまいますが。私の人生初イザイが2番のソナタだったもので、当時の恩師に「献呈された相手くらい調べとけ」と言われ買った思い出。訳・村上和男氏が、有名なティボー自伝『ヴァイオリンは語る』(またヴァイオリン語ってる……)と比較して曰く、

このクリスティアン・グボー氏の著書は、ティボーの独奏ヴァイオリニストとしての活動だけでなく、室内楽演奏者、音楽の教育者としても彼が大活躍した事実をできるだけ正確に網羅し、彼の全世界に亘る演奏活動、各国での演奏批評などを多数収録してある点で、(中略)極めて客観的な書き方は、ティボーの研究資料としても非常に価値の高いものである。

だそうな。よく選んだな高校生の私。いや親だったか。兎にも角にも、現在は中古での購入しか望めなさそうなのが悔やまれる。

そんなティボーさんは、ただでさえ飛行機恐怖症の私にさらなるトラウマを植え付けてくれたヴァイオリニストの一人でもある。もう一人はもちろんジネット・ヌヴー。

※ギドン・クレーメルほか『偉大なるヴァイオリニストたち クライスラーからクレーメルへの系譜』

タイトル 偉大なるヴァイオリニストたち クライスラーからクレーメルへの系譜
原題
編著者 モルク,ジャン=ミシェル(Molkhou,Jean-Michel)(訳:藤本優子)
出版社 ヤマハミュージックメディア
初版年月日 2012/06/21
備考 CD音源(mp3)付。インタビューではない

※レオポルド・アウアー『レオポルド・アウアー自伝 サンクト・ペテルブルクの思い出』

タイトル レオポルド・アウアー自伝 サンクト・ペテルブルクの思い出
編著者 レオポルド・アウアー(Leopold Auar)
訳・監修 訳・角英慶
出版社 出版館ブック・クラブ
初版年月日 2018/08/08

※イヴリー・ギトリス「魂と弦 増補改訂版」

タイトル 魂と弦 増補新版
原題 L’âme et la corde
編著者 イヴリー・ギトリス(Ivry Gitlis)
訳・監修 訳:今井田博
出版社 春秋社
初版年月日 2017/03/21

※ジュール・ブーシュリ「ヴァイオリンの奥義 ジュール・ブーシュリ回想録」

タイトル ヴァイオリンの奥義 ジュール・ブーシュリ回想録
現代 Les secret du violon
編著者 マルク・ソリアノ(Marc Soriano)
訳・監修 訳・桑原威夫
出版社 音楽之友社
初版年月日 2010/07/20

補足とコメント

  • 各種情報は2019年7月時点のものです。
  • 中古しかないものもあれば、以外にも電子書籍版が新たに発行されているものもあって喜び。
  • 言わずもがな、英語ないしは原語でggrと他にも大量に出てくる。日本の英語教育のますますの発展を願います。
  • さらに言わずもがな、彼らを知るには彼らの音楽を聴くことが何よりも大事だと思います。ただ、20世紀を生き抜いてきたヴァイオリニストたちの人となりや言葉、人生がどんどん遠くなっていくのを感じて寂しいので、機会があればぜひ彼らのことばに触れてみてほしい。
  • 個人的にはジャズも入れたかったです。スタッフ・スミスとかグラッペリとかザイファートとか。
  • 適宜更新・追記します。