趣味

令和元年・齢26、海外音楽院に留学しても、VOCALOIDが作業用BGMだった。

「そんなのばっかり聴いてるからきみは耳が悪い」が、とあるひとの口癖だった。「きみ」とはつまり、クラシック音楽と呼ばれる類の音楽を学び、コンクールや某学校受験の準備に追われていた、中学生ないしは高校生のガキんちょであり、そのガキんちょは今、令和元年・齢26、ワッフルとビールが美味い国の片隅で、机作業の背景に相変わらず「そんなの」を延々リピートし続けている。

ボカロの話である。

VOCALOIDの話である。

などと書き出してはみたものの、「ボカ」という字の並びが目に入った時点でおっパズカシイ黒歴史がまざまざ蘇り、なんか、既に「ウッ……ちゅうに爆発ゥ……!!」とかえずいてるわけで、それでもええいいああもう黒歴史、ここに、某動画サイトを漁って見つけたVOCALOID楽曲を貼り散らしてみる。これを読む人々の中に、きっと、私と同じような誰かがいると信じて。

「アンチクロロベンゼン」- ガルナ(オワタP)@feat.鏡音リン

いまとなってはもう動画の演出とか歌詞とか直視できない、それっくらい振り切っちゃってくれてる中二ソングなのだけれど、無限リピートにこれほどぴったしな一曲はない。

同じ「ベンゼン」シリーズの前作、「パラジクロロベンゼン」に対するアンサーソング。「パラジクロロベンゼン」のほうが音楽としては好きだが、謎単語だらけの記事を読んだりイザイの無伴奏ソナタをアナリーゼしなくちゃいけないときには、「アンチクロロベンゼン」のほうが脳グソをハイにかき回してくれる。ぐーるぐる!ぐーるぐる!かっこいいよね!!

ちなみに、ベンゼン三部作の完結編とされる「トルエン」(feat.巡音ルカ)は、「あなたには、絶対解けない。」というあおり付きの謎解読系ソングとなっていて、あな恐ろしや、これが令和になってもいまだ解読されていない。戦慄。同じくルカによるヒントソング「阿吽」とか作曲者自身の生放送コメントとか、公式ヒントも少しずつ出されているのに。そして相変わらず、オワタPは視聴者に解決させる気がない。怖。

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「砂の惑星」- ハチP@feat.初音ミク

「米津玄師ってボカロ曲もいっぱい書いててめっちゃよかったんよー!リンネとか結ンデ開イテ羅刹ト」

「え、米津玄師がボカロなんかやるわけないじゃん!キモ!!にわか乙!!」

──なんて会話が繰り返されることももう減ったかしら。ハチPはもう帰ってこないかもしれないけれど、なんだかんだ砂の惑星の人間は、お好きに勝手にやっていける気がしないでもない。

「砂の惑星」はまさしく「ああ米津玄師がボカロやったらこうだよね」という絶妙さがいい。ちなみに私は「clock lock works」が好きで、「diorama」「MAD HEAD LOVE」時代の米津玄師が好きだった。いまの米津玄師はおれにはまぶしすぎる。あ、でも「海の幽霊」が好き。

「うみなおし」- MARETU@feat.初音ミク

まぶしすぎるひとの次は真っ黒な人を。実はこのMARETU氏については最近知ったばかりで、中高生時代にどハマりしていたわけではない。「コインロッカーベイビー」といういかにもな楽曲名をちらと耳にしたことがある程度。

初音ミクでヘビメタロックやらせるセンス、「Like this」とかデスボイスで言わせちゃうセンス、サムネ画像のセンス、こう、振り切ってていいよね!ヘビロテ確定。

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「誰かの歌で僕が死ぬ」- 36g@feat.結月ゆかり

こちらも同じく。作曲者もボカロも「しらないひとや」と聴いてみたら大当たり、ついでに某動画サイトの百科事典を漁ったら、終わりなく並ぶVOCALOIDの名前一覧に目がくらり。すっげえなボカロ。

「空想庭園依存症」- cosMo(暴走P)@feat.鏡音リン

cosMo@暴走Pの楽曲といえば、「初音ミクの暴走」「初音ミクの憂鬱」、そして「初音ミクの消失」に連なる、「初音ミクの消失シリーズ」なのだけど、氏は他にもけっこういろんなシリーズを書いていた。そのうちのひとつがGAiA氏と共同製作していたこの「空想庭園」シリーズである。

もともと、ボカロのどうあがいても人間にはなれない声が好きで、CosMo@暴走Pはそれをとことん追求してるところがさらに好きだった。「鬼調教」とはよく言ったもの、随所に挟み込まれたいい意味で耳に障る声の裏返りとコブシ、ざらついた高音域、さらにCメロで突然ねじこまれるルカっぽい声は、鏡音レンと巡音ルカをミックスしたやつ、──そこまでこだわるかよぉ!みたいな所行の塊。罪。あと、実際にはこんなきれいに聞こえてこないだろうピアノパートとか、なんというか、個人的にCosMoもとい暴走Pは「開き直ってる」感がとても潔かった。

アペンド総出撃「初音ミクの分裂→破壊」とか、よくもまあ……最高だぜ……

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「終点」- cosMo(暴走P)@feat.初音ミク

要するに、私にとってcosMo@暴走Pとは、当時リアルタイムで追いかけていたボカロ作曲者のなかで、最も熱中していた一人だった。

あまりに有名過ぎる「初音ミクの消失」シリーズも、今回はあえて外しているけれどわりと好きではあった。「消失」が10年以上前、2008年に書かれたことは、現在にいたるボカロの変遷を鑑みるにかなりすごいことだったのではとおもう。

けれどもその後、「空想庭園」シリーズと同じくGAiA氏との共同製作による「街」シリーズが始まると、あまりにも歌詞・ストーリー先行になりすぎ、音楽がパッチワーク化していくようでついていけなくなった。私はこの現象を内心で「サンホラ後期現象」と呼んでいたが、それはいらぬ飛び火なのでさておく。

私のVOCALOID熱は暴走Pのそれとほとんど並行して、すーっと冷めていった。けれどもそのあいだ、暴走Pは「激唱」を超えた先で、「終点」を書いていた。この曲はいま聴いても好きだった。無理に初音ミクの語りを入れなくてもよかったんじゃないのかなあ、とか思うけれども、ぎこちない語りがかえって懐かしくていい気もする。

「リアル初音ミクの消失」- cosMo(暴走P)@feat.GUMI

そういうわけで、私は暴走Pが好きなのだった。氏が今でもVOCALOIDの楽曲を発表し続けていることは、ちょっと嬉しい。でも正直、顔出ししていたことにはびっくりした。時代。

一方で、かつては聴いていたけどいまはぜんぜん聴かないなー、という作曲者もいるし、かつて好きだった作曲者でも、最近の作品はぜんぜん好きでなかったりする。ランダム再生で流れてきた楽曲を、冒頭だけで「command + W」することもある。自分がVOCALOID界隈に求めていた音楽は、ある種ゲーム音楽的な、ずっと流しっぱなしでいられて、簡単にハイになれて、それでいて恋とか愛とか人間臭さから離れた、単純な音楽だったのかもしれない。

正直に言えば、いまこうして、VOCALOIDの楽曲を聴くことに恥ずかしさと、罪悪感がないわけじゃない。ましてやこんなふうにお気に入りの楽曲を並べたりして、「お前はそんなだから」と言われることへの恐怖がないわけではない。

けれどもう、あのころ使っていたアカウントのIDもパスワードも、もう、ドワンゴのサーバーのどこかに埋もれてしまった。あんなに没頭していた思い出が、情報化社会などクソ食らえで霞と消えていく。新たに作った適当なアカウント名で、ニコ動こんなに繋がりにくかったっけ──と思いながら、マイリストの連続再生をクリックし、コメントをオフにし、ついでに心のあっちとこっちもオフにして作業に没頭するいまが、すこし寂しい。

ABOUT ME
Ayako KATO
ヴァイオリニスト。@Musica Cosmos
《ムジカコスモス vol.04》
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「2つのヴァイオリンによる音の宇宙」

2020/03/07(土)開催。

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