books

ロベルト・シューマン先生の『音楽と音楽家』が名言だらけでグサグサくるよ!

音楽家の名言集といえばこれ、ロベルト・シューマン先生の『音楽と音楽家』。シューマンの著書・評論集で、ショパンやベルリオーズを評価していることでも知られていますが、これがまあグサグサ来るわクスッとなるわでなかなか楽しいので紹介。

シューマン先生の名言連発、『音楽と音楽家』のざっくり解説

シューマンが作曲家兼音楽評論家としても優れていたのは有名な話。この『音楽と音楽家』は彼の論文を集めたもので、完成の経緯も、シューマン自身がまえがきに詳しく書いています。

文中、シューマンの内面を投影したキャラクターが出てきます。主な登場人物はこの二人。

  • フロレスタン……明るくて活動的。
  • オイゼビウス……静かで思索的。

この二人の頭文字「F」と「E」は、それぞれシューマンの楽曲に登場することもあるそうなんですが、ぶっちゃけ私、実は、シューマンについてはあんまり詳しくない……歌とか室内楽は好きだけど……ていうかシューマンの交響曲あんまり好きじゃない……

おかげさまで私のシューマンの主なイメージは、「映画『クララ・シューマン 愛の協奏曲』で脳天にドリルで穴あけられてたかわいそうな人」、そして、この『音楽と音楽家』から成っています。浅い。浅いな、いかんとは思ってるんだがあんまり好きじゃない

スポンサーリンク

『音楽と音楽家』より、シューマン先生の名言集

とはいえそんな彼の言葉は、今なお我々音楽家の心を叱咤します。たぶん。

また、当時の若き作曲家や楽曲の評論も非常に読みやすく、ユーモアに溢れています。吉田秀和氏の翻訳もとても読みやすいです。モーツァルトの書簡集とかベルリオーズの「音楽のグロテスク」とかちらっと読んだけど心が折れたという、音楽文集・評論初心者の人はぜひ。

というわけで、さっそく個人的にグサグサきた名言を紹介していきます。

 「スコアがなくたって音楽わかれよ!」

「とんでもないことだ! 良い音楽家とはスコアがなくとも音楽がわかり、音楽がなくともスコアのわかる人のことをいうのだ」

──フロレスタン

「あの子、スコア読みながら演奏聴いてるよ、偉いね」というラロー先生なる人物の発言に対して。1グサ。

実際、「スコア読みながら音源聴きなさい!」って言われるけど、どうせ演奏しているときに見るのはパート譜だし、スコア見ながら音源聴いても……という考えはちょっとずれるがよくわかるお言葉。

 「もっとやれよ!もっと熱くなれよ!」

一度自分を制限してしまったものは、遺憾ながら、その後いつもその枠のなかにいるように要求される。

──オイゼビウス

2グサ。

自分を過小評価したり、自分を責めたりするのはタイトなように見えてその実、逃げてるだけだったりする。さすがシューマンえげつないシューマン。

 「いつまでも他人の作品に頼ってんじゃないよ!」

多くの精神は、まず制限を感じた時に初めて自由に動き出す。

──ラロー

「シェイクスピアがいなくてもメンデルスゾーンの《真夏の夜の夢》は生まれただろうか」

「そのシェイクスピアだって、さらに古い芝居や小説から題材を取っているわけで、なぜ他人の創作物から自律したものを生み出すのだろう」

そして、その対話の締めくくりがラローのこのセリフです。

音楽は自由なもの、というけれど、本当にそうだろうか。仮に自由だったとして、それは、本当によい音楽だろうか。あと、近年のパクリとか著作権云々問題とか、やんわりと関わってきそうな会話。3グサ。

巻末:シューマン先生、直伝の名言

こちらは、登場人物を介さないシューマン先生ナマのお声。

どんな流行も、結局流行遅れになる。年寄りになってもそれを続けていると、時代おくれとして、誰にも尊敬されなくなる。


古いものを尊敬するように。しかし、新しい曲もまた暖かい心で接するように。知らない名だからといって、偏見をもたないように。


ほかの芸術や科学をみると共に、自分のまわりの生活をしっかり観察せよ。


道徳の掟は、また芸術の掟である。

一気にグサグサ行きました。

『音楽と音楽家』巻末に、ドドドドドッと載せられているこの「音楽の座右銘」。ここに挙げた以外にも、音楽家に向けた厳しくて沁みる言葉がわんさかしてます。

もう200年も前の人が書いた言葉なのに、今になっても全然色褪せないし、むしろ、思い出すべきものだらけに思える。そんな人が、一方では愛する人に熱烈なラヴレターを送ったり、幻聴に悩まされて入水自殺を図ったりするわけです。なかなか人間臭くていいおっさんだったと思います。

スポンサーリンク

最後に:『音楽と音楽家』、名言だけじゃなくて評論も面白いよ!☦

とまあここまでシューマン先生の名言をピックアップしてきましたが、もちろん、評論も面白い。最後の「ノート」はほとんどメモ書きみたいで、

リヒャルト・ヴァグナーのまずい演奏。わけのわからない速度(テンポ)。

──ベートーヴェン《フィデリオ》


二幕だけきいた。人形芝居の音楽!

──ドニゼッティ《籠姫》

あと傑作なのが、マイヤベーアの《予言者》について、

という十字架のマークだけが書いてあるので、「ナンジャコリャ」と吉田秀和氏の訳注を読むと、

こういうものは早く死ぬことを祈るという意味であろう。

などとクソ真面目に書いてある。辛辣。今なら炎上案件。

 

というわけで、シューマン大先生の著書『音楽と音楽家』なのでした。ポケットに忍ばせておくと、シューマン先生にお尻を叩いてもらえる良書です。でも先生はSNSとか絶対やっちゃいけないタイプだとおもいます。

「あの作曲家がSNSにハマったら」名だたる西洋音楽の作曲家たちが、SNSをやっていたらこんな感じ? という、独断と偏見によるしょうもない走り書き。「◯◯がいない!」...
20世紀を生きた巨匠ヴァイオリニストたち─インタビュー・著作まとめ20世紀前後に活躍した巨匠ヴァイオリニストにまつわる証言/インタビュー/自伝まとめ。※は手元にないもの。「巨匠とか誰が決めたんだよ」「他...
ABOUT ME
加藤 綾子
ヴァイオリニスト。 BIOGRAPHY
AYAKO KATO à Namur, Belgique.

Follow Me