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室内楽

レベッカ・クラークの『ドゥムカ』って知ってる? 女性作曲家の隠れた名作をご紹介。

こんにちは。

加藤綾子(@akvnimp)です。

 

クラシック愛好家、もしくは演奏家のアナタ。

「レベッカ・クラーク」という女性作曲家をご存知でしょうか?

そして、彼女が書いたピアノ・ヴァイオリン・そしてヴィオラのための『ドゥムカ』という作品を、ご存知でしょうか?

 

「知ってるよ!」というアナタ、なかなかツウです。

一般にはあまり知られていない、この『ドゥムカ』 。

実は、知る人ぞ知る、隠れた名曲なのです。

 

というわけで、きょうは、

レベッカ・クラーク作曲

『ドゥムカ ピアノを伴うヴァイオリンとヴィオラのためのデュオ・コンチェルタンテ』

をご紹介します。

レベッカ・クラーク作曲『ドゥムカ』の概要

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レベッカ・クラーク(1886-1979)

『ドゥムカ ピアノを伴うヴァイオリンとヴィオラのためのデュオ・コンチェルタンテ』

Rebecca Clarke

“Dumka” Concertante for Violin and Viola with Piano

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レベッカ・クラークってどんな人?

さて、レベッカ・クラークはもちろん女性で、イギリス生まれ、そしてヴィオラ奏者の作曲家でした。

彼女の代表作としてよく挙げられるのは、『ヴィオラとピアノのためのソナタ』。

※40秒くらいから演奏開始です。

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そして、今回ご紹介するこの『ドゥムカ』。

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これがとってもよい作品なのですが、ピアノ、ヴァイオリン、そしてヴィオラという珍しい編成であること、

そして、作曲家が女性であること――といった理由からか、あまり知られておらず、演奏される機会も少ないのが現状です。

 

ヴィオラ奏者としても、作曲家としても腕前を認められていたレベッカちゃんですが、当時はまだ、なにかと女性にキツイご時世。

その作品はなかなか日の目を見ず、再評価されたのは、その晩年ないしは死後のことです。

この『ドゥムカ』も近年評価されつつあって、「ヴァイオリン・ヴィオラ・ピアノの編成といえばコレでしょ!」と言われるような、重要なレパートリーのひとつになっています。

『ドゥムカ』解説

「Poco Andante」ってどういう意味なのレベッカちゃん!

さて、ここからは演奏者視点で、レベッカ・クラークの『ドゥムカ』についてじゃんじゃん語っていきます。

こちらの動画も参考にしながらお読みください。

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まずは冒頭。こんな言葉が書いてあります。

「Poco Andante」。

 

ポコ アンダンテ。

…「ちょっと歩くような」ってなんじゃい!

というのはさておき、この冒頭のメロディと和声は、日本人的にかなりぐっとくるはず。

コブシ付けたくなっちゃうような、いい味してます。(でもあくまで『Poco Andante』の音楽なので、あまりクドイと違和感注意)

 

イギリスって、なんとなく曇っているような、ホームズとかジャック・ザ・リッパーとかポーの一族とか、そんなイメージですが、まさにそれだと思います。

どよーん……

 

「ドゥムカ」ってどういう形式なのレベッカちゃん!

そして、動画でいう01:59のあたり。

ここから音楽がガラッと変わります。楽譜には「Allegro Moderato」という、これまた微妙な表記が。

「快速に」「中庸」ですから、少なくとも、速っ!というテンポではありません。

「スッテッステテンッ、スッテッステテンッ」と、それまでの思慮深さはどこへやら、ピアノがダサイダンスっぽいリズムを示します。

そして、さすがはヴィオラ推しのレベッカちゃん、ヴァイオリンではなくヴィオラにメロディを先行させます

ピアノのリズムも相まって、ゴツいおっちゃんのシブくて泥臭い踊りです。たまりません。

 

ちなみに、この展開はタイトルにある「ドゥムカ」という形式にのっとってます。ちょ〜〜〜〜〜平たく言うと、

[box class=”box8″]暗くてゆっくり → 明るくて速い → 暗くてゆっくり[/box]

みたいな、三部構成の形式のことです。元はスラヴ発祥の音楽だったとかなんとか。

ドヴォルザークやらチャイコフスキーやら、いろんな作曲家が「ドゥムカ」を書いています。ご試聴あれ。

※ちなみに、複数形だと「Dumky」(ドゥムキー)になります。豆知識。

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ここが見せ場だよレベッカちゃん!

さて、曲調が変わってからのち。

途中で3拍子のワルツっぽくなったり、弦楽器のピッツィカート(弦を弓を持つ手の指で弾いてるヤツ)や、各奏者が異なる拍子で演奏したり…

あの手この手を尽くして展開していきます。

 

そんなこんなで、見せ場その①。

弦楽器が半音階、ピアノが大きな三連音符でズデデデデデデと登って行き着いた先。(動画03:44

ピアノが、冒頭「Poco Andante」の旋律を音数・音量マシマシで弾いてくれます。

ここらへんはもうピアノの独壇場。弦楽器2人も負けじと応えます。

グワーッ!と3人で盛り上がったあとは少しずつしぼんでいき、ピアノがひとりぼっちでどこかへ行ってしまいます。

が、すぐにまた、あの泥臭い、ダンスの足取りで帰ってくる。

 

このへん、ほんとよくできてます。レベッカちゃん、もっと評価されてもいいと思うの。

ここが見せ場だよレベッカちゃん!その②

で、また「Allegro」のアタマに帰ってきたなあ──と思っていたら、ここで見せ場その②。

 

そう、ヴァイオリンとヴィオラのカデンツァ

「Allegro」頭でヴィオラに言い出しっぺを持っていかれたヴァイオリンが、たっかいたっかい「A」の音に一足早くゴールイン。(動画05:40付近)すぐにヴィオラも追いつきます。

そして、そこから雪崩のようにドドドドッと転がり落ちていく弦楽器2人。

 

すると今度は、ヴィオラのチョ〜〜〜〜いいところ。

カデンツァが終わったあと、次に動き出すきっかけとなる、たったひとつのピッツィカートを、ヴィオラが鳴らすのです。

ボロロン、と包み込むようなピッツィカートをしてもらえると、次のヴァイオリンのワンフレーズがとても弾きやすくてとてもうれしい。そこのヴィオラ弾きのアナタ、よろしく。

「Poco Andante」ふたたび、そしてコーダへ…

そして、今度は曲全体の冒頭――「Poco Andante」へ帰ってきます。これで三部形式の完成です。

ただし、そこには「Tempo Ⅰ meno mosso」と付け加えられています。つまり、「アタマのテンポに戻るけど、前より動き少な目・元気なさげ」というような意味ですね。

単純に「前よりテンポを落とせ」とも言います。

 

弱音器をつけた弦楽器ふたりと、ピアノの雨だれのような和音。

とぼとぼと、もう、楽しいことなんて何にもなくなっちゃった――とばかりに、三人で歩いていきます。

 

そして、最後の最後、まるでエピローグのように、ヴァイオリンが新たな旋律を歌い出します。「semplice」、つまり「単純に」という楽語を添えて。

これまでずっとヴィオラと一緒だったのに、突然、ひとりぼっちになってしまったヴァイオリンを、ピアノがそっと支えます。

 

ちなみにここ、ヴァイオリン奏者的には、この曲中いちばん美しくていちばんコワイところです。

なぜって、弱音器をつけたまま、

他に旋律を持つ人がだれもいない状態で、

きれいなんだけど弾きにくいメロディを「単純に」歌わなくてはいけないからです。

ヴィブラートのかけ具合、弓のスピードと配分、呼吸の取り方、すべてに神経を使わないと、とても耐えられません。でもそんなアナタが、わたしはすき。

 

しばらくすると、見かねたヴィオラが戻ってきてくれますが、最後の最後には、弦楽器2人が完全音程でハモらなくてはいけませんし、ピアノは、

「ズン…テン、ズテテン…、ズン…テン、ズテテン…」

と、例の泥臭いリズムをじっとりと、静かに弾き続けなくてはいけません。3人とも、ずーっと気が抜けないラスト半ページ。

そして、ピアノの足取りが完全に遠のき、止まったところで、この曲は終わります。

 

中間部「Allegro Moderato」の部分ではあんなに楽しそうだったのに、じわーっと、ぼやーっとした終わり方。とってもおセンチな気分になります。

いい歳したオトナにはたまらない味わいです。

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最後に:チェロがいない「ピアノ三重奏」の魅力

というわけで、レベッカ・クラーク作曲『ドゥムカ ピアノを伴うヴァイオリンとヴィオラのためのデュオ・コンチェルタンテ』なのでした。

 

正直、わたしも大学院の室内楽でこのトリオを組むまで、『ドゥムカ』も、レベッカちゃんのことも知りませんでした。

チェロがいない三重奏──というのは、おそらくそれだけで、作曲家にとって扱いづらい編成なのでしょう。

フォーレやブルッフなども同じ編成の作品を残していますが、個人的には、この『ドゥムカ』がいちばん好きです。

 

「コンチェルタンテ」なので、弦楽器二人の協奏曲的な面もありますが、ピアノの扱い方は伴奏ではなく室内楽のそれ。

そしてなにより、このやっかいな編成で、しかもたった10分程度の時間に、最低限の要素が詰め込んであって、ドラマチックに展開していく。

生で聴くと、その和声や旋律のさびしさ、切なさに胸が打たれます。

 

というわけで、この記事をここまで読んでくれたアナタ。

ぜひぜひ、3/7(水)のこちらの演奏会へ。加藤綾子、この『ドゥムカ』を、1年間、チームを組んできた友人と一緒に演奏いたします。

わたしが参加するグループは右上です!招待券ございますので、画像クリックで飛べるお問い合わせフォームから、お気軽にお申し込みを。

そして、もしこちらには来られなかったとしても……どこかで『ドゥムカ』をプログラムに取り入れたレアな演奏会があったら、ぜひ足を運んでみてください。

これできょうから、あなたも立派なクラシック音楽通です。

 

それでは、また。

ABOUT ME
加藤 綾子
フリーランス音楽家という名のフリーター。 後ろ向きだっていいじゃない 人間だもの あやこ という意識の低さで生きている。ヴァイオリン演奏・ライティングなど、お仕事のご連絡はこちらにお願いいたします。ayakokatovn@icloud.com
室内楽演奏会「Endor」開催

「モーツァルトへの手紙」をテーマに、モーツァルト作曲の室内楽曲、そしてオーボエ四重奏のための完全新作「Endor」(エン・ドル)を初演いたします。

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