10/19(金)室内楽演奏会「Endor」開催!
日記帳

「何が好きか」で人を評価する空気、嫌いです。

好きなものを好きと言えない、そんな空気が、わたしは大嫌いである。

「あんな演奏好きとかないわー」

「おれ、あの演奏好きなんだよね」

と誰かがいうと、

「え、あんなのが好きなの?」

「あの人あんなのが好きなんだってーわかるー(暗黒微笑)」

みたいなやりとりが、教室、ホールの控え室、トイレの整列、──どこかこの世界の片隅で、かならずと言っていいほど起こる。

 

たしかに、趣味嗜好をはじめとする価値観は、その人自身を象徴していることもある。

が、そんなもんしょせん、個人の一側面に過ぎない。

ましてや、その人がどんな多面体であるかもわかっちゃいないのに、「あんなの」が好き=あの人ないわー、という図式が、一部の人たちの間ではできているのだ。

 

ちと短絡的すぎやしないか。

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「そんなことが好きだからあなたの音楽は」

でもこれは、音楽や演奏に限ったことじゃない。

 

「あの演奏家が好き」「あの作品が好き」から転じて、

「あの絵が好き」「あのバンドが好き」「あの作家が好き」「漫画が好き」「映画が好き」「書くことが好き」「読書が好き」「ゲームが好き」「運動が好き」

ありとあらゆるたったひとつの「好き」で、個人の評価が決められてしまう。そんな風潮が、少なくともわたしが関わってきた世界の一部にあった。

 

以前、わたしはこんな記事を書いた。

聖剣伝説3のBGMが名曲揃いで語り出したら止まらない。懐かしいゲーム音楽の思い出思い出といえば懐かしい。懐かしいといえばゲーム。ゲームといえばそのBGM。 ということで、今日は、とても個人的な思い出話をする。『...

これ自体はどうということはない記事に見えるけれど、個人的にはけっこうドキドキしながら書いた。なぜって、わたしにとって、

クラシック音楽を専門にしている人間がゲーム音楽について語る

という行為は、現実に、だれかと面と向かっては、とうてい行えないものだったからだ。

 

子供のころから、わたしはヴァイオリンをやっていたけれど、ゲームやアニメも好きだった。それらに関する音楽もよく聴いた。

でも、そういう音楽を聴いていると、周りの人によく言われたもんである。

「そんなのばっかり聴いてるから」、と。

「ねえ、◯◯ってどうおもう?」

いまはたぶん、みんな、も少し心が広い。

プロのオーケストラが映画音楽やアニメ音楽を(演者の内心はさておき)演奏することもそんなに珍しくないし、いま第一線で活躍している演奏家たちが実は◯◯好きでした──なんてのも、微笑ましいエピソードとして数えられているとおもう。

それでも、演奏家や演奏家のたまごのあいだでは、やっぱり、こういう叩き合いは存在している。

 

あの人はああいうのが好きなんだって。だからああいう演奏をするんだね。

 

これがポジティブな評価ならまだしも、たいてい、そういうものさしで人を見る方々は、ネガる。これでもかとネガる。

で、大人になるにつれみなさん、そういうネガる/ネガられる空気を察するので、お互いの趣味嗜好について口にすることを憚るようになる。わたしなぞは、うっかり話そうものならドン引きされること間違いなしなので、基本的にそういった類の話はあいまいな笑みでごまかしている。

 

が、タチが悪いと「ねえ、◯◯ってどうおもう?」などと誘導尋問を行ってくる玄人もいる。

もちろん悪意のないことも、ある。でも、なかにはまるで、下世話なワイドショーじみたノリで突かれることも、ある。

勘弁してほしい。

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好きなものくらい好きだと言わせてよハニー

「わたしはこれが好きだよ」

「そうなんだ、わたしはこれも好きだよ」

──わたしの身の回りで、こういうサクッとしたやりとりは、ほんとうに、寂しくなるくらい少なかったように思う。

 

なにが好きか。そんなもの、本来、その人の評価や価値を決めることではなかったはずだ。

それすら口にできない空気の押し付け合いが、いったい、どんなゲージュツを生むというのか。

 

いいじゃねえの、好きなものくらい。

好きなんだから好きに語らせればいいものを、そして好きじゃないなら会話に参加せず「ああ、この人はわたしと違う趣味なのね、なるなる」と思ってりゃいいものを、どうして、ネガってディスらにゃ気がすまないのか。

好みひとつで、人の価値が決まってたまるものですか。

 

「好き」ということばが、もっと軽いものになればいい。

音楽ではなく、音楽にまとわりつく空気が、必要以上に重くて粘っこい。そんな気がしている。

ABOUT ME
加藤 綾子
フリーランス音楽家という名のフリーター。 後ろ向きだっていいじゃない 人間だもの あやこ という意識の低さで生きている。ヴァイオリン演奏・ライティングなど、お仕事のご連絡はこちらにお願いいたします。ayakokatovn@icloud.com
室内楽演奏会「Endor」開催

「モーツァルトへの手紙」をテーマに、モーツァルト作曲の室内楽曲、そしてオーボエ四重奏のための完全新作「Endor」(エン・ドル)を初演いたします。

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