書籍・本

『違国日記』第4巻・感想 笠町くんと結婚したい。※ネタバレ有

笠町くんとけっこんしたい。

第1巻から読み返せ──「違国日記」第4巻

以前、「違国日記マジで人見知りにたまんないけど、共感作用にがっつり食い込んでる漫画だよね」──というようなことを恐れ多くも書いたのだけれど、第4巻まで読んで撤回する。そんなこたあ微塵もなかった。

ヤマシタトモコ『異国日記』感想 きれいな人見知り漫画。※ネタバレ有

 

大きな事件は今のところ起きない。なにせすでに、朝の両親が事故死、槙生ちゃんが啖呵を切って子犬を引き取る──という事件、加えて、そこから3年後の生活が初回で描かれてしまっている。これ以上環境が激変してしまうような「大きな事件」が起きてしまうことはない、とはハナから分かっている。

だから、ある意味安心して読み進められるのだけれど、ぶっちゃけここまで化けるとは思ってませんでしたスミマセン。

小さなコマ、小さな台詞、表情、そして出来事を重ねていくだけで、漫画はおもしろくなる。また第1巻、最初から読み返したくなるよき最新刊でした。これまでも良かったけども。

スポンサーリンク

もうひとつの日記

あなたの名前は、必ず来る、新しくて美しいものという意味を込めて、一生けんめい考えました。あなたが誰からも愛されるように、

からの、

槙生 あんたみたいな人間は誰からも好かれないのよ

 

こんなに酷い対比があるだろうか。いずれ20歳を迎える娘に宛てられた、実里の三年日記。(朝の日記、槙生のエッセイに続く第三の日記とも言える)そこにはとてもうつくしい言葉が、うつくしい文字で描かれているのに、どうしても指差す姉の姿が割り込んでくる。

槙生ちゃんの中には、自分を指差し見下ろす姉の姿ばかりが現れてしまう。これはもう違国日記作中でしつこいくらい繰り返されている描写なのだけれど、第4巻では、この描写にどんどん変化が現れる(槙生の夢の中であったり、笠町くんとの会話中、茂みから現れる指先であったり)。

 

さらにPage.17では、そんな槙生ちゃんが姉のベッドに腰掛けるとき、朝の中では、亡き母の姿がかぶる。この時の朝の顔もまた苦しい。(ちなみにこのシーンの直後、朝も同じ構図でベッドに腰掛ける。芸が細かいあざとかわいい)

Page.17はこれまでの違国日記中、かなり好きなエピソードで、朝・槙生・祖母、誰もの台詞の一つ一つがいい。あなたは人から好かれることにてらいがないね……いいな、その「てらい」の使い方……発明家かよ槙生ちゃん。

鈍く狡くなっていった母

そのPage.17の主役といやあBBAもといおばあちゃんですよ。ぶっちゃけ、このエピソードを読むまでこのおばあちゃん=槙と実里の母親だと思ってなかったスンマセン。

いや、そうじゃなかったら交通事故の直後の病院で、このおばあちゃんが朝と一緒にいるわけがないのだけれど、彼女は初登場時からおよそ母親(祖母)とは思えない違和感があって、いや言い訳じゃなく、つまりそれが、

「でもあなたに両親の遺体を見せた」

ここなのである。個人的に、ここはわりと強烈なページだった。

そうだった、「怖くて確認なんかできませんよ」と言う祖母、それに対して「え」と反応する槙生ちゃんも、きちんと描かれていたのだった。(第1巻Page.2参照)

老いていく母を「鈍く狡くなっていった」という槙生ちゃんの台詞は、人ごとではない。

 

ただ、これが「ひばりの朝」だったらえげつねー描写のまま終わってしまったと思うのだけれど、今回は最後、「槙生ちゃんのお母さん」になる。少なくとも、もうダメではない。この母娘の距離感と言うか感触、わか……る…………わかるだろォ……!?

スポンサーリンク

「違国日記」第4巻のあれこれ

あなたとわたしは違うから

わたしが何に傷つくかはわたしが決めることだ あなたが断ずることじゃない!

今巻、実際に使ってみたい台詞ナンバーワンである。ありがとう槙生クイーン。

そして、読者的には朝のことをこう、ぐっと、「ああ、あの人の子なんだな」と思ってしまうシーンでもある。電波障害みたいとな……自分が悪い人みたくなっちゃうのおかしくない、とな……ほほう。

違国な日記のジェントルマン

そのさ 怒らないで聞いてくれよ

……おれはきみをおれに頼らせたいんだよ

なんで笠町くんはこんなにパーフェクトなんですかね。

この辺り、ヤマシタトモコのちょっとやり過ぎなくらいセクシーでかっこよくてオトナな男節が惜しみなく、いいダシが取れています。

あと、槙生ちゃんが最後の一切れを口にできない餃子、笠町くんが「餃子食っちゃっていい?」って聞いた餃子、ぎょうざ、ぎょうざ、のコマ、すっげえいいよね……ぎょうざ……さぞ美味いんでしょうなあ、そのぎょうざ。

えみりちゃんの日記

えみりちゃんがどんどん大人になっていく。ギャル……!

朝に彼氏作らないの? と言われたあたりの「や──……」とぼかす顔とか、Page.18で一瞬えみりちゃんのお母さんかと思ってしまうような出で立ちとか。この辺のヤマシタトモコ氏の描写が本当にたまらねえ。

そして、まさかの第四の日記。フォースチルドレンかよ……

それにしても、「人と違う」とは、やっぱりそういうことなんだろうか。そういう描写、第3巻までにあったっけ。第5巻はいつですか。

 

ABOUT ME
加藤 綾子
ヴァイオリン奏者という名のフリーター。 後ろ向きだっていいじゃない 人間だもの あやこ。ayakokatovn@icloud.com
2台ヴァイオリンによる《ムジカコスモス》vol.3
designed by Yuki Morishita

チケット購入はこちら