Belgique

鉛筆の末路

鉛筆で全解答したDELF B1の試験に受かっていた。パリ、サン・ドニのホテルのベッドに頭を突っ込んで、2度目のB1受験を翌日に控えていた水曜夜のこと、ブリュッセルのAlliance Françaiseから「Admis」と「Faux」、「54.50/100」と「 /100」、異なる結果を知らせる電子メールが二重に届いて、私は、翌朝9:45の集合をブッチしちまおうか懊悩した。朝5時まで眠れなかった。

結局、サン・ドニでも試験は受けた。なにせ鉛筆で解答した試験の、バグった二重通知である。本当に受かっているのかどうか、怪しい。非常に怪しい。メールで問い合わたが例に寄って返事は来ない。期待値低し。私の胸中など世の中にとってはクソどうでもよくて、DELFの試験は朝10時に開始された。ゴワゴワの耳でCOをやり過ごし、ショボショボの目でCEとPEをやっつけて、カラカラの喉でPOを乗り越えた。ちゃんと、青のフリクションで解答した。サン・ドニの、ケンタッキーのなりそこないみたいなフライドチキン屋でランチを取った。

翌日。ブリュッセルのAFから、「Veuillez trouver votre attestation de réussite.」という文面とともに、通知のPDFが届いた。54.50/100だった。

それでも、私は信じられなかった。なにせ相手は、大事な大事なDELFの合格通知を、フランス政府ご認可の国際的な語学試験の合格通知を、バグだかなんだか知らねえが二重に送ってきちゃうようなうっかりさんである。このPDFだって、なんらかの手違いによるものかもしれない。信じられない、この目で、この手で確かめるまでは。しかし、パリからブリュッセルに帰る日は土曜、もちろんAFは閉まっている。月曜だ。月曜の午前、ナチュラルホルンの試験でホルントリオを終えたのち、ブリュッセルへ行く。もはや合否はどうでもいい、ともかく、真実がほしい。

胃をぶっ壊した。

カーネル・サンダースのバチがあたった。

土曜日、死人の顔で私はパリからナミュールへの帰路につき、そのままナチュラルホルンのリハーサルを終え、「明日からしばらく家を空けるので一緒に暮らしている鳥の世話を見て欲しい」という友人に「Oui」と答えた。私もうっかりさんである。だって小鳥ちゃんはかわいいし、友だちは大事なのである。キリキリゲロゲロしている胃腸を抱えながら、日曜の記憶は存在していない。くたばれrègle。

月曜が過ぎた。ブラームスのトリオの3楽章が、ナチュラルホルンの課題だった。うつくしい曲だった。試験を終え、少しはましになった胃袋にプリングルスを放り込みながら、ふとスケジュールを確認する。火曜は音楽史の口頭試問だった。

 

一文字も用意していなかった。

 

火曜が過ぎる。

 

私は、鉛筆で全解答したDELF B1の試験に受かっていた。

フランス語をまともに始めてから、半年と少しくらいだと思う。恥ずかしい点数だが、B1なんか取れちゃって、内心、けっこう喜んでいる。ちょっと褒めてやってほしい。

お次は、B2。

 

*注……DELFヘの解答は、原則、鉛筆NGです。受験会場HPのconditionやrèglement、申し込み後のconvocationとか、よく読んでみると書いてあるんじゃないかと思います。どうしてもわからなかったり、気になったりする場合は、会場ないしは試験官に事前に問い合わせましょう。俺のようになるな。

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Ayako KATO
ヴァイオリニスト。@Musica Cosmos
《ムジカコスモス vol.04》
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