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太宰治は『人間失格』だけじゃない!おかしくて切ない、オススメ短編5選

こんにちは。加藤綾子(@akvnimp)です。

 

きょうは、わたしが大好きで大好きでしょーがない太宰治のオススメ作品を紹介します。

「太宰治って『人間失格』でしょ?鬱々しててなんかやだ

「太宰治なんか読んだら気分落ち込みそう……元気になれる話、ないの?」

というアナタにぜひ読んでほしい、太宰治の元気が出る短編を集めました。

れんれん
れんれん
ほんとかなあ……

黄金風景

負けた。これは、いいことだ。そうなければ、いけないのだ。かれらの勝利は、また私のあすの出発にも、光を与える。

文庫にしてほんの数ページ。

太宰の視点で描かれた掌編。彼が幼い頃、いじめていた実家の女中と、東京でばったり出くわすという話。

 

ほんとに、たった数ページなんです。

女中をいじめていた過去、現在の自分の惨めさ、そして最後、女中の親子三人が笑い興じている、浜辺の風景──ぜんぶがぜんぶ、鮮やかに描かれていて、無駄がない。

ここに、太宰の人間味が凝縮されていると思います。それこそ、何度も読み返しました。

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きりぎりす

おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました。私にも、いけない所が、あるのかも知れません。けれども、私は、私のどこが、いけないのか、わからないの。

太宰といえば、なんといっても女性目線の話が上手い。

「なんでこんなに女の気持ちがわかるの?」と不思議でなりませぬ。このタラシめ。

 

そんな女性目線の作品はいくつかあり、短いものだと「女生徒」なんかもオススメですが、一丁前にゲージュツ家なんぞ気取るわたしは、この「きりぎりす」を推します。

 

引用したのは冒頭部分。これのおかげで「ダンナが浮気でもしたのかしらん」と思いながら読み始めることになるのですが、全然違います。

初めのうちは売れない絵を描いていた、いかにも孤高の芸術家といった風情のダンナがどんどん売れて、俗物化していく。彼だけでなく、彼の周囲の人間もだらしない。

そんな変化についていけない主人公。

わたしは、ばかだったのでしょうか。(中略)私は、あなたこそ、その天使だと思っていました。私でなければ、わからないのだと思っていました。それが、まあ、どうでしょう。急に、なんだか、お偉くなってしまって。私は、どういうわけだか、恥ずかしくてたまりません。


いい仕事をして、そうして、だれにも知られず、貧乏で、つつましく暮らして生きていく事ほど、楽しいものはありません。私は、お金も何もほしくありません。心の中で、遠い大きいプライドを持って、こっそり生きていたいと思います。


きっと、悪い事が起る。起ればいい。(中略)けれども、悪い事は起りませんでした。一つも起りません。相変わらず、いい事ばかりが続きます。

 

グサグサと、この主人公に心をめった刺しにされながら読みました。

純粋に、芸術だけをやっていくわけには、いかないのでしょうか。

れんれん
れんれん
やっぱ落ち込んでる……

皮膚と心

「ふざけちゃいけねえ。職人仕事じゃねえか、よ」

先ほどの「きりぎりす」とまるで対をなすような、女性目線の夫婦の話ふたたび。

ところがどっこい、こちらの夫婦は円満。読んでいてこっ恥ずかしいくらいのろけていやがる。なんだこいつら。

 

立派な図案工(デザイナーのことだと思います)である夫と結婚した主人公。

ある日、自分が大好きな某化粧品店の蔓バラ模様のデザインを夫が手がけていたことに気がつき、無邪気にはしゃぎます。それに対する夫の返答が、引用した台詞。この照れ臭そうなところがイイ。

 

自分なんて何にもない、皮膚がきれいなだけが取り柄(それなのに皮膚にポツポツができてしまったことが話の発端)──と卑下する主人公と、立派な仕事をしているのに、自分を卑下する夫。

そのやりとりが、どうってことないのだけれど、読んでいて微笑みが漏れてしまう。

『黄金風景』もそうですが、市民のさりげない幸せ、小さな喜びの描写が太宰はほんとに上手い。だからこそ堕ちていく時がたまらんのだよ、なあ人間失格。

れんれん
れんれん
やっぱ堕ち込むんじゃん!
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駆け込み訴え

申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。

このタイトルだけ見ても、まさかキリストの弟子ユダの話だとは誰も思うまい。

ともかく疾走感が半端ないです。音読したくなるような、むせ返るようなユダのやるせなさ。そしてみっともなさ。

太宰の短編の中でも、1、2を争うくらい好きです。堕天100%だねユダちゃん!

れんれん
れんれん
(もうだめだこいつ)

畜犬談

私は、犬をきらいなのである。

畜犬。

なんて身もふたもない呼びかた。

今だったら眉をひそめられること間違いなしの表現。ええ、犬がこんなふうに扱われていた時代もあったのですね。

保護犬を飼って、世話している身としてはちょっと不謹慎ですが、でもまあ、くそわろた。

 

ぜひ読んで。

れんれん
れんれん
ポチ先輩はんぱないっす。

▶ちなみに、我が家の「畜犬談」はコチラ。「『脱糞王子』と呼ばれていた元・保護犬が、我が家の一員になるまでの話。

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最後に:「日の出前」もオススメです。

というわけで、「太宰治は『人間失格』だけじゃない!おかしくて切ない、オススメ短編5選」なのでした。

5つに収めようとするとなかなかどれも捨てがたく……うーん、「日の出前」も黒くっていいんだよなあ……『晩年』からもどれか一作選びたいなあ……などとブツブツ独り言言いながら書きました。

 

個人的には、新潮文庫の装丁がとても素敵で、解説もついているのでオススメ。今回挙げた5作のうち、「駆け込み訴え」は『走れメロス』に、それ以外の4作は『きりぎりす』に掲載されています。

 

それでは、また。

この記事をきっかけに、あなたが太宰治に少しでも興味を持ってくれたら幸いです。

ABOUT ME
加藤 綾子
フリーランス音楽家という名のフリーター。 後ろ向きだっていいじゃない 人間だもの あやこ という意識の低さで生きている。ヴァイオリン演奏・ライティングなど、お仕事のご連絡はこちらにお願いいたします。ayakokatovn@icloud.com