MUSIC

誰のための演奏会?コンセプト・テーマから演奏会を企画する

自主企画公演。みんなやってるし、私も頭の中で次の企画を考えてる時が一番楽しいんですが、そのときにまず、なにを考えるべきなのか──という話。

真っ先に考えるべきは、プログラムでも日取りでもなく、演奏会のコンセプトなのかもしれない。最近、そんなことを考えています。

バラバラな素材をまとめる下地、演奏会の「コンセプト」

「コンセプト」といっても、そんなにややこしい話ではありません。テーマ、メッセージ性、なんてふうに言い換えてもOK。

なんてことを考えるきっかけになったのは、以前行ったこちらの公演。

「ヴァイオリン 」「電子音響」「ダンス」……

下手すればとっ散らかったものになりかねない演奏会ですが、ひとつの「詩」を下敷きにしていました。その詩をベースに企画し、道具を選び、音響を選び、衣装を選び、出来上がった舞台で即興演奏をする。

そうすることで、「単なる即興演奏のライブ」に一気に統一感が出てきて、観客も、「へえ、この詩で即興演奏するとどうなるんだろう?」と興味を持ってくれる気がする。

要するに、その演奏会の下地になるもの、土台になるものをきちんと意識してみよう──ということです。

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クラシック演奏会では後回しにされがちなテーマ

とくに、クラシックの演奏会の場合、テーマやコンセプトって後回しにされがちです。編成や、演奏者の希望曲が優先されて、「なんか、バラエティに富んでていいよね!」と笑顔の引きつる演奏会がとても多い。

もちろん、やりたい曲をやるのが一番ですし、メンバーの都合って調整しにくいものなんですが、でもまあ、聴く側からしたら、プログラムや編成に一貫性・テーマがない=「魅力がない」のは致命的。

 

選曲するにしても、なぜその曲をえらぶのか。なぜこのメンバーなのか。

もー「きれい」とか「憎しみ」とか、なんでもいいので、ガツンとメッセージ込めてるっぽいコンセプトを決めてみましょう。後付けやこじつけでも、ないよりずっといい。

観客へ伝わるものがはっきりしているかどうか、この差は大きいはず。

即興演奏でもコンセプトはあったほうがいい

「え、即興演奏なのにコンセプト決めちゃうの?」と思われるかもしれません。私も以前はそうでした。

決め事なんかしたら即興演奏じゃなくなっちゃうじゃん、って。

 

でも、「即興演奏だから、なんにも決めなくていいや」「そのときだけ集中して演奏してればいいでしょ」という演奏会をやると、聴衆にはなーんにも伝わりません。「やっぱり即興演奏って、やってるひとが楽しいだけだよねー」程度にしか思ってもらえません。

そんな演奏会、はっきり言って意味なくねって思います。

 

ここで誤解しないでほしいのは、

「いや、おれは自由に、純粋に即興演奏のライブがしたいんだ!」

というあなた、なにも間違っていません。なぜなら、それはそれで「純粋な即興演奏を聴かせる」という、立派なコンセプトだからです。

そうではなく、「なんとなく」「即興演奏だから」という甘えが少しでも見えてしまうと、演奏会としての魅力は大激減してしまう。そういうお話です。

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具体的なコンセプトの例:新日本フィルハーモニー定期演奏会

わりと最近、私が「うおーコンセプトわかりやす」と思ったのが、2017年11月10日、「新日本フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会」

気になるそのプログラムは、

  1. ラフマニノフ作曲:交響詩「死の島」
  2. チャイコフスキー作曲:ピアノ協奏曲
  3. レーガー作曲:ベックリンの絵画による4つの音詩

 

……はい??? なにそれ????

と疑問符が浮かぶマイナー楽曲2曲で、ド王道な「チャイコン」を挟んだこのプログラム。

が、実はこの通な2曲、実は非常にわかりやすく、ベックリンという画家の絵画が重要な意味を持っていました。

アルノルド・ベックリン作「死の島」(wikipediaより引用)

そして、ラフマニノフが尊敬していたチャイコフスキー。彼の超有名なピアノ協奏曲を間に挟むことで、バランスを取ったんだろうな──と、押してはかるべし選曲。

解説にも「チャイコフスキーがもし、ベックリンの絵画をみていたならどんな作品を書いただろう」というようなことが書いてあったりして。こういう、観客の想像力を刺激してくれる粋な計らい、イイよね。こと自主企画公演だと、ついつい手が回らなくなってしまうプログラムノートなんですが、きちんと書くと観客の心にけっこう残ったりします。

で、その演奏会って何を伝えたいの?

結局のところ、演奏会ってこれに尽きると思います。

その演奏会を行うことで、来た人になにを伝えたいのか? 来た人に、どうなってほしいのか?

これって、演奏会だけでなく、演奏そのものや、ブログの記事、何かを「表現」する全てに共通することだと思います。

「演奏会、企画しよう!」というとき、ちょっと立ち止まって、まずはコンセプトやテーマをじっくり考えてみるのもアリなんでは。「今回はこういうメッセージを伝えたいから、プログラムはこれで、演奏者はこの人で、演奏会場はここ……」という流れ、案外悪くないです。

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加藤 綾子
ヴァイオリニスト。 biography