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【ネタバレあり】ズブのサッカー素人がサッカー漫画『アオアシ』にハマった話

細かいこたあどうでもいいくらい面白いのに、細かいところに大事なとこが全部詰まってる。『アオアシ』はそういう漫画です。

 

『アオアシ』概要

『アオアシ』

作:小林有吾

取材・原案協力:上野直彦

掲載誌:週間ビッグコミックスピリッツ

あらすじ:サッカー大好きの天パ少年がアヤシイおっちゃんにナンパされて東京のユース・サッカーチームに入ってめっちゃ頑張る話。

私にはサッカーがわからぬ。なんか11人でいっぱいボール蹴って「オフサイッ! オフサイッ!」言ってるイメージである。あとなんかめっちゃ倒れてる。

なので、とりあえず冒頭を試し読みした時は「あーこういう『タフでポジティヴで自信過剰で、でも隠れた才能を持つ少年』がガンガン成長していく話ねふんふん」てな感じであった。

Jリーグに「ユース」なるものがあるとかないとか、アカデミーがあるとかないとか、そんな話ももちろん、微塵も聞いたことがなかった。

 

そして、この「タフでポジティヴで自信過剰で、たった1つの才能に恵まれている少年」という設定が、まさか、後になってとんでもない伏線として回収されるなんて夢にも思っていなかった。

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伏線が半端ないサッカー漫画『アオアシ』

以下、ストーリー内容に触れるのでネタバレの可能性があります。ご注意ください。

そうなのだ。『アオアシ』は伏線回収が半端ない漫画なのだ。

 

例えば、葦人が練習中、チームメイトにけちょんけちょんに言われる場面がある。その時、細目の黒田くんはこんなことを言う。

パスからメッセージが伝わらないの?

──『アオアシ』4巻

私も葦人くんもさっぱりイミフである。要するに蹴り方ひとつ、ボールの勢い一つに、サッカー選手は「意味」を載せている──と言うお話なのだけど、この時点ではわからない。

じゃ、いつわかるようになるのかと言うと、まず1つ目。このあと一つ山場を迎えるある試合で、葦人は彼なりにとんでもない覚醒をするし、仲間とのコミュニケーション法も身につける。ここの感動たるや凄まじいものがあるんだけど、黒田何某のセリフがもたらすものは、まだまだ続きがある

 

そして、黒田何某のセリフを100%(いや、ひょっとしたらまだ全部ではないのかも)理解した時、また、葦人の中でサッカーが広がっていく。

──────つながった。

また、「サッカー」がつながった。

──『アオアシ 第11巻』

 

一コマ一コマ、試合の最中、あっという間に場面が転換していくうちの吹き出しにすら、後になってわかる大事な意味が込められていたりする。

これまで好き勝手、点を取ることにこだわるばかりだったなんちゃってFWの葦人くんが、「サッカー」を学んでいく。その過程が、ものすごくアツく丁寧に描かれている。

錯綜するチームメイト、先輩、コーチ、女の子の人間関係なんてミステリー漫画さながらである。ただのなんちゃってスポ根漫画じゃねえのですよアオアシは!

ズブのサッカー素人でも、サイドバックがどんだけすごいかわかってしまう漫画。

だいたい、サッカーをほぼ知らない素人でもほとんど淀みなく、最初から読み進められた──って、よくよく考えてみるとすごい。

サッカー大好き葦人くんも、サッカー大好きなわりに如何せんアレなので、コーチ、監督、そして友人たちからサッカーの基礎をこれでもかと思い知らされる。その度に葦人くんと私はショックを受け、「サッカーが広がっていく」感覚を知り、そして葦人くんはめちゃくちゃな努力をする。

 

この漫画のすごいところは、この「努力」にあたる練習の場面がものすげえ面白い。

ある巻に至っては、気がついたらチーム内での練習しかしてなかったのに、退屈さなんてこれっぽっちもない。オシム式パス回しとか、サッカーファンならきっと「おお、あれ漫画でやるの!」とか思うのでは。

 

かくして、ズブのサッカー素人だった私は、W杯の試合90分間に釘付け、「ほんとだコーチングしてる! 首振りそんなにしてる選手いなくね! サイドバックまじサイドバックじゃんやばい!と烏龍茶を吹き出す有様となった。罪深い漫画である。

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天才なんだけど「うおおお!やっちまえええ!!」と盛り上がれる天才

ぶっちゃけ、主人公の青井葦人君はある種の天才である。

でも、『アオアシ』は天才が俺TUEEEEEする話では、断じてない。むしろ、葦人の成長っぷりは見ていて清々しいし、時折恐ろしくさえある。

そして、いわゆる正真正銘の天才がもう一人現れる。栗林トゲトゲ君である。

この、天才が天才であることの恐怖の描き方がやたら上手い。エグい。エグすぎる。こんなん、勝てるわけない。たった一人、ピッチに投入されただけで何もかもを変えてしまう、そんなばけものが現れる。

 

そして、今のところ『アオアシ』作中で一番ぶっ飛んだ才能をお持ちであらせられるのが、福田監督。これはもう最初から明かされるので書いておくが、彼はバルセロナで活躍するほどのエイリアンだったのだけれど、怪我が原因で引退し、今は東京のユースチームの育成に専念している。

専念しているとか言うレベルじゃない。まさしくなんでもお見通し、神の目的な存在である。

お前の才能は、そう言う使い方じゃない。

──『アオアシ』第11巻

あくまで「自分で点を取る」と言うことに固執している葦人に対し、怒るでも諌めるでもなく、微笑んで言うこのセリフ。

ピッチ内にいるメンバーですら気がついていなかった、葦人の才能ゆえの「淀」を、福田監督はさらっと指摘し、図星をさされた本人は「ゾワアアアアアッ」と青ざめる。

 

でも葦人くんも十分怖い。とある彼の才覚が芽生えつつある試合。見事決勝点アシストを決めた葦人は、とあるチームメイトに向けて、どう見てもトンじゃってる目で、

オフサイドポジションだよ。お前がいたとこ。

──『アオアシ』第8巻

 

怖っ。

 

どうしてこれが怖いのか、ネタバレなしに語るのはちょっと難しい。でも、読んだことがある人なら、この時の葦人の怖さがきっとわかってもらえると思う。

なので『アオアシ』は、天才を取り巻く人々のお話でもある。エグすぎる才能、エグすぎる言動を前にして、「じゃあ、どうするのか」と考える人々の話。そしてその考える葦の中に、もちろん、主人公もいる。

「考えろ。人は考える葦である。」

これはきっと『アオアシ』作中の最大の名言で、テーマの一つなのだと思う。

頑張れ。人は考える葦である。

──『アオアシ』第1巻

ともかく考えること。考えることをやめないこと。考えて、考えて、考えた最後には──もう、考える必要なんてなくなる。

 

練習している時の葦人くんはカッコ悪い。苦労して入った東京のユース・チームの仲間から「そんなこともわからないの?」「お前と話なんかしたって通じねえよ」的な態度を取られる彼の姿を見せられるのは、結構キツイものがある。単行本4〜5巻のギスギスした人間関係、だいこうぶつです。

 

そして、13巻まで発行されているこれまでの中で、葦人にとってもっとも重要なターニングポイントとなったある事件。(これもきちんと伏線が貼られている)

まじでしんどい。なぜって、それまで、葦人にせよチームメイトにせよ、どんなに実力の差を思い知らされることがあっても、それは前向きな成長の気配を孕んでいた。でも、葦人のそれはちょっとケタが違った。今まで「足で歩け」と言われていたのを「逆立ちで歩け」と言われたに等しい事件だった。

 

そして、それでも葦人は腐らない。

 

考える。ひたすら考える。練習の最中に、ベンチ入りすらさせてもらえなかった試合の見学中に、学校に通い、日々の生活を過ごす中で、葦人はひたすら考え続ける。考え、必要なことは実践し続ける。

自分の目指していた場所は、自分がやりたかったことはこれじゃない。それでも、「それはもう…わかった。」と葦人は思う。

それはもう…わかった。

わかったから。迷惑はかけるな。仲間に。

──『アオアシ』第7巻

 

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ヒロインがカワイイ。まったくウザくない。

スポーツ漫画にありがちなのが、「ヒロイン」による弊害である。

「うっぜーなお前が出てくるたんびに話が止まるんだよ、くだらないことで赤面してんじゃねーよとっととスポーツしろ」

というアレである。そうでなくとも、男だらけになりがちなスポーツ漫画において、ヒロインの存在は結構扱いが難しい。

のだけど、「アオアシ」のヒロインはごっつカワイイ。カワイイ上に、サッカーに真剣に関わる立場にあり、サッカー漫画のヒロインとしての役割を持っている。

(正確には、うち一人は直接サッカーだけを専門としているわけではないのだけど……その辺は読めばわかる)

 

要するに花ちゃんカワイイよ花ちゃんということである。お嬢も好きだけどな!

サッカー知らなくても楽しめるよ!『アオアシ』

というわけでサッカー漫画『アオアシ』なのであった。

幼い頃から一つの夢を目指してがむしゃらに頑張る、という王道ものは、これまでの自分を振り返ると懐かしいような申し訳ないような気持ちになる。だからこそ面白いのだけど。

次巻は14巻。スピリッツ買っちゃおうかなーと思うレベルで次が待ち遠しい。もうだいぶ漫画は読まなくなったけど、いい作品に出会えました。

 

ABOUT ME
加藤 綾子
フリーランス音楽家という名のフリーター。 後ろ向きだっていいじゃない 人間だもの あやこ という意識の低さで生きている。ヴァイオリン演奏・ライティングなど、お仕事のご連絡はこちらにお願いいたします。ayakokatovn@icloud.com
室内楽演奏会「Endor」開催

「モーツァルトへの手紙」をテーマに、モーツァルト作曲の室内楽曲、そしてオーボエ四重奏のための完全新作「Endor」(エン・ドル)を初演いたします。

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