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動画《1minute play.》について。コンチェルトの「1分間」を抜き出す意味

先日から、YouTubeにて《1minute play.》というシリーズを投稿し始めました。

タイトルの通り、ある楽曲から1分間だけ抜粋して演奏し、録画に収める──という、いたって単純な企画です。現在はBéla Bartók のヴァイオリン協奏曲 第2番から抜粋していますが、そのうち、ぜんぜん違う曲の抜粋も始めるかもしれません。

ただ、この企画についてはちょっと書きたいことがあったので、こうしてブログを開いています。

理由1つ目──コンチェルトやソナタは、本当に「全曲通し」で聴かれるのか?

厳密に言うと、この企画は「ある楽曲から1分間だけ抜粋して演奏した動画を複数制作」し、「プレイリストにまとめる」ところまでが目標になっています。これに思い至った理由は、大きく分けて2つあります。

まず1つ目の理由は、いま、クラシック音楽と呼ばれる音楽を、全て通して聴く人がどれほどいるのだろう?──という疑問でした。あとにも触れますが、定額制音楽配信サービスが主流となりつつあるいま、ソナタやコンチェルトを全楽章・あるいは楽章ごとに通す=様式に沿って聴くという行為は、広い世界で見れば、そう多いものではないように思います(想像です。統計やデータはぜんぜん取っておりません)。

例えば、もしYouTubeやサブスクリプション配信サービスでうっかりクラシック音楽界隈に迷い込んだ人がいたとして、それがバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番の第1楽章、20分にも及ぶ楽曲だったとして、もしかしたら、ぐっと心を引き込まれて全部ぶっ通しで聴くかもしれませんが、作業用BGMがいつまでも次のトラックに進まないことに気がつき、「まだやってんのかよこの曲」と▶︎ボタンをタップする人も多いのではないでしょうか。

ではもし、そこで、あるワンフレーズが突然、耳に飛び込んできたら。そして、その気になるフレーズだけを何度も何度も、無駄な操作なく繰り返し聴くことができるとしたら。「これは、なんの曲の、どんな部分なのだろう」「この続きはどうなるのだろう」と、かえって興味を惹くのではないか?

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理由2つ目──あちこち切り取られた1分間を、ランダムに再生されたらどうなるのか?

2つ目が、ランダム再生です。サブスクしかり、YouTubeしかり、web上で音楽や動画を視聴できるサービスの大半は、アルゴリズムによる判断でランダムに再生されることが多く、Spotifyなどは聴きたい曲だけを思い通りの順番で再生したければ課金しろ、という固い意志を感じます。いやそれがいいとか悪いとかではなくて。

では、ある楽曲の「1分間の抜粋」をプレイリストにまとめて、それをランダム再生したらどうなるだろう?

これはまだ実行できていないのでなんともいえないのですが、当然、ひとつの楽曲には聴こえない。でもたとえば、本来なら決して連続して聴けるはずのない箇所が続けて再生されたことで、気が付くことがあるかもしれない。よく知っていたつもりのその曲の、思いがけない姿を耳で知ることができるかもしれない。

これは普通なら、とても難しいことだと思っています。というのも物理的な話、ある1楽章の「中身」をまぜこぜランダムに聴くアプリなんて(たぶん)存在していないし、タイムラインを手動であっちへこっちへスワイプするのも手間です。ランダムでなくとも、提示部と再現部を続けて聴いたり、移調する部分だけ聴き比べたり、あの、絶妙な位置にスワイプ・クリックする操作が地味にストレスで……。

要するに、いちど(ランダム)再生を開始する→プレイリスト内で勝手に抜粋が選ばれる、というのが、自然に不自然を行うには最も適していると思ったのです。

少し話は逸れますが、「その演奏家がその1分を抜き出した」というだけで、聴く人は何かを考えるかもしれません。なぜここを選んだのか、その意図を読み取ろうとするかもしれません。ただ無作為なのか、演奏者の嗜好なのか、解釈なのか、──演奏者本人が示さない限り、それは想像するしかありません。これは、1stアルバムのボーナストラック制作用に、バルトークのカデンツァを収録したときに気がついたことでした。演奏ではなく、ある部分を抜粋するだけで、「いま、ここを、聴け」と、強いるようなメッセージさえ持つのだと。

YouTube「類似・低クオリティなコンテンツはNG」

ここまで書いてきて思い出したのですが、そういえば昔、名曲100曲の冒頭だけ抜き出したCDがありました。今もあるのかな。もしかしたら、趣旨と考えは似ていたのかもしれません。

ちなみに、この動画企画については現時点でわかっている欠点があって、それはいつの日か、我がYouTubeチャンネルが登録者数1,000人、過去1年間の総視聴時間4,000時間を越え、満を辞して収益化審査に臨んだ時、「低クオリティ・似たようなコンテンツが多い」と落とされるんじゃねえかってことです。いかんせん1分、しかも定点カメラの映像、では1分演奏をいくつかまとめて3〜5分の、めりはりのついたコンテンツにすればいいのかというと、それではコンセプトから外れるわけで……取らぬ狸の皮算用。

さらにちなむと、動画2本目をUPした数日後、こんなことがありました。

いま全世界的に流行しているであろう、スマホに直接ドッキン☆マイクのご到着です。おかげさまでまったくもう、世界が変わっちまいました。音が違う、まるで違う、そりゃあもうまるまるまるっと違う……ので、……ええ……すでに上げた2本、撮り直しますとも。

というわけで《1minute play.》なのでした。なにせ各動画1分、お気軽に楽しんでいただければと思います。

Ayako KATO official YouTube