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1年前のきょう、わたしはコンチェルトのソリストだった。

こんにちは。

ヴァイオリン奏者・加藤綾子(@akvnimp)です。

 

きょうは11月4日

多くのひとにとってはなんてことない日なのですが、わたしにとって、この日は特別な日です。

 

去年のこの日。

わたしは、人生で初めて、オーケストラ、そして指揮者とともに、コンチェルトのソリストを務めました。

 

単なる思い出話ですので、興味のないかたはバックバック。

※キャッチアップ画像は洗足学園音楽大学大学院Facebookページから引用。

ソリストに選ばれても「抜け殻」状態だったわたし

大学院に入ってからしばらく、わたしは、抜け殻状態で日々を過ごしておりました。

詳しいことはまた別の記事で書きますが、「ヴァイオリンを弾くこと」「音楽をすること」の目標を完全に見失っていました。

 

ソリストに選ばれてから本番まで、たしか4〜5ヶ月あったと思います。

その間、ただただ、むなしくて苦しかったのを覚えています。

 

なんとか気合い入れようとセミナー行ったり、レッスン受けたり。

先生に話を聞いてもらったり。

 

‪それでも、

自分は音楽のことが好きじゃないかもしれない

だれかに認めてもらうことしか考えてなかったのかもしれない。音楽はその手段でしかなかった

という後ろめたさが拭えなくて、楽器や音楽と向き合えない日々が続きました。

秋山和慶先生のリハーサル

そうこうしているうちにリハーサルが始まりました。

【レポート】『大学院コンチェルトの夕べ ~オーディション合格者によるソロの饗宴~ 練習風景』今週金曜日に行われる演奏会、「大学院コンチェルトの夕べ」のリハーサルの写真が届きました。『大学院コンチェルトの夕べ ~オーディション合格者に…

洗足学園音楽大学大学院さんの投稿 2016年11月1日(火)

 

わたしの演奏曲目はチャイコフスキー作曲の『ヴァイオリン・コンチェルト』。超超超超有名曲ですよね。

指揮を振られたのは、洗足学園の芸術監督・秋山和慶先生。

こちらの動画でも振ってくださっている、ほんとうに素晴らしい指揮者であらせられます。

▶︎この動画、ときどき学校のサイネージでも流れているのですが、当時は立ち止まって眺めてはひとりで泣いてたりしました。「あのころは楽しかったのに」って。重傷。

 

その秋山先生がいらした初回のリハーサル。

「あれ?」と思いました。

 

オーケストラの音が、すーっと身体に入ってくる。

むしろ、オーケストラの音が、自分のなかから出てくる。

 

ぱたぱたぱた、と、自分のイメージしている音と、現実に演奏されている音がはまっていく感覚。

それまでずっとよそよそしかった音楽が、チャイコフスキーのコンチェルトが、自分のなかにぴたりとハマっていきました。

それとも、わたし自身が音楽のなかにハマっていったのか。

 

1年経っても、未だにあの感覚をうまく言い表せないのですが、ともかく「気持ちよかった」んです。

オーケストラの中でたゆたう感覚

オーケストラって、流れるプールみたいなものだと思うんです。

ソリストは、プールのなかを好きに泳ぎ回れる。

指揮者は、うまーく水の流れを作ってくれる、流れるプールの管理人みたいな存在です。

 

リハーサルが始まったばかりのころは、自信のなさもあいまって、かなり遠慮がちに弾いていました。

でも、その波のなかでたゆたうような感覚が気持ちよくて、だんだん「あ、これやってみようかな」とか「あっちいってみようかな」とか、あれこれ試したくなってくる。

しかも、実際に動いてみると、秋山先生が、オーケストラが先回りしてくれるんです。

 

それで、ようやく気がつきました。

「音楽って、わたしが思っていたよりずっと、自由が効くらしい」と。

音楽がわたしの「ことば」になったとき

そうしてリハーサルを重ねていくうちに、

  • ソリストだから、
  • オーディションで選ばれたから、
  • いままでずっと音楽をやってきたから、
  • いまの自分に自信がないから、

そういうことが、どーでもよくなっちゃったんです。

 

だって秋山先生はすばらしいし、オーケストラはみんな優しくて真面目だし、「ぶっちゃけ聞き飽きたわ」とか思ってたチャイコフスキーのコンチェルトも、よくよく考えたら泣けるほどいい曲だし。

なにしたって、わたしの思い通りになるし。

 

いいじゃん。いま、弾いてるのが楽しいんだから。

音楽なんて、他にやる理由あるの?

 

たぶん、そのときようやく、音楽がわたしのなかから生まれてきたんだと思います。

それまで即興演奏だとか、周りにあたり散らして表現することしかできなかった音楽が、ようやく自分の「ことば」として生まれてきたんです。

わたしが何をするまでもなく、音楽は流れている。

そうはいっても、もちろん、本番は緊張しました。

それこそ、チビりそうなほど怖かったです。

 

でも、第1楽章の第2主題をすぎたあたりで、あのオーケストラのなかで泳いでいく感覚が戻ってきました。

 

大体、何もしなくたって、音楽はとっくに流れている。

チャイコフスキーがこの曲を書いたころ、スイスの別荘地だかなんだかで愛人のヴァイオリン奏者(♂)とイチャついてたあのころから、音楽はずっと流れ続けてきているわけで、わたしはただ、それに乗って泳げばいい。

 

もし、わたしが溺れそうになっても、秋山先生が手を差し伸べて、助けてくれる。

演奏中いつも、視界のどこかに、秋山先生の手が、指先が、指揮棒がありました。

ときどき目が合うんですけど、ついうれしくなっちゃうんです。「あ、わかってくださってる」って。

そりゃ先生は、『チャイコン』なんて何百回と振ってらっしゃるんですから、当たり前の話なんですけど、でも、その『みんながわかってる』瞬間が、ひとつひとつ、たまらなく気持ちよかった。

 

だから、すごーく楽でした。

チャイコフスキーのコンチェルトなんて、オーケストラと一緒に弾いたら死ぬほど大変だと思っていたし、実際大変だったけど、想像よりずっと楽で、気持ちよかった。

何もかも忘れて、ただ「今このときが楽しい」と、心の底から思えた、初めての演奏でした。

 

【レポート】『大学院コンチェルトの夕べ ~オーディション合格者によるソロの饗宴~』11/4(金)前田ホールにて「大学院コンチェルトの夕べ」が開催されました。本学特別教授・秋山和慶先生の温かなお人柄溢れる指揮から繰り広げられる極上の音楽…

洗足学園音楽大学大学院さんの投稿 2016年11月8日(火)

【大学院コンチェルトの夕べ】終演後……

あとになって思うと、あれって、即興演奏で無我の境地に達しているのと同じ感覚だったと思います。

自分のなかから自然と『チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲』が溢れてきた。即興演奏をしているみたいに

 

最後の一音を舞台上の全員と一緒に弾き終えて、響きが消えて、秋山先生と目が合ったとき、思わず笑い声が零れたのを覚えています。

笑って崩れ落ちそうな勢いそのまま、握手しました。

 

※洗足学園音楽大学大学院Facebookページより引用

 

「コンチェルトなんて、うんざりするほど弾いてるよ」

世の中にはそういう、ものすごいソリストたちがごろごろいるし、そのひとたちからしたら、「たかが一回、学内の本番で」と思われることなのかもしれません。

 

でも、あのときのリハーサルが、演奏会がなかったら、いまのわたしは存在していませんでした。

 

舞台の上で、崩れ落ちそうだったわたしの手を握ってくれた秋山先生。

終演後、舞台袖でわたしを迎えてくれた先生方、家族、友人、後輩や先輩。

あんなに温かな手を、温かなまなざしを、わたしは他に知りません。

 

また、あそこに戻りたい気もするし、もう戻らなくてもいいのかも、という気もします。

あの日のできごとをときどき思い返しながら、わたしはいま、自分なりになんとか生きてます。

 

▶︎今年の【大学院コンチェルトの夕べ】は11月17日(金)。わたしは、いちばんイイ席でソリストを見守っています。

招待券もありますので、お気軽にお問い合わせくださいくださいませ。

 

今年のソリストのみなさんにも、「気持ちよかった」と思ってもらわなくっちゃ。

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